第23章 拗れた微熱は指先に溶けて《後編》* 石田三成
「栄養たっぷりのお粥だよ!」
「……人参は入っていませんよね?」
「入れたかったけど我慢した、ふふっ」
美依様が椀に粥を盛って、私に手渡す。
ほかほかと湯気が上がる粥は、野菜がたくさん入っていて見るからに美味しそうだ。
私はそれを匙で掬い、口に運ぶけれど……
思ってる以上に熱くて、思わず口に付けた匙を反射的に離した。
「熱っ……」
「ちゃんと冷ましてから食べないと火傷するよ!私が冷ましてあげるね」
「あ……」
手渡された椀を再度私から受け取り、美依様は粥に息を吹きかけて冷ましてくれた。
一口ずつ冷ましては口に運んでくれる美依様に、少しばかり気恥ずかしさを覚えながらも……
愛する人に世話を焼かれている自分も嬉しくて、つい頬が緩む。
(でも、まだ当分お預けですね……)
美依様と入れ違いで風邪を引いた。
つまり、仲直りをしてからまだ美依様をきちんと可愛がれていないのだ。
体調が戻ったら、思いっきり愛させてくださいと言ったのに、まだそう出来ていない。
何と言うか、やっぱりどこか消化不良な所があるんだよなぁと思っていれば……
つい押し黙った私の顔を、美依様が不思議そうに覗き込んだ。
「どうしたの?」
「……美依様を抱きたいなぁと思いまして」
「えっ……」
「美依様の風邪が治ったら、心行くまで愛する予定だったのに、先延ばしになってしまっているので」
「そ、そうだね……」
私が言えば、美依様は褥の横で姿勢を正して俯く。
顔が朱に染まって、照れているなぁと言うのは丸わかりだ。
早く治して、貴女を可愛がらなくては。
考えてみれば、喧嘩する前もあまり甘い時間を過ごせていなかったのだから……
想いを交わせていない期間が長すぎて、思考回路も麻痺してしまいそうだ。
「三成君……あのね」
「どうしました?」
「あの口づけの痕…消えちゃったの」
すると、美依様はおもむろに首筋を手で押さえた。
口づけの痕って、あの嫉妬に駆られて無理やり付けた所有痕のことだろうか。
美依様は愛おしむように首筋を撫で……
やがて、ふっと口元を緩めた。