第21章 一世の契り * 帰蝶
「……おいで、美依」
「あっ……!」
俺は美依の躰に腕を回し、ふわりと抱き上げて、繋がったまま胡座の上に座らせた。
そのまま脚を広げさせて、下から一回突き上げる。
さすれば、さらに繋がりは深くなって……美依は背中を弓形に反らし、天井を仰いだ。
「あぁぁっ……!」
「深くまで、届いているな」
「それ、以上、だめぇぇ!」
「駄目ではない、嫌も聞かない」
その状態で、何度も何度も下から貫く。
奥の口に先がめり込む感覚がするな。
そこは女の性感帯と言うけれど、美依もそうらしい。
細い洞をぎゅうぎゅうと締め上げ、躰は悦んでいるように思える。
ずちゅっずちゅっ、じゅぷっ
聞くに絶えない、淫猥な音だ。
突き挿して隙間なんてないはずなのに、口からは愛液が滲みだし、それがまた昂りを滑らせる。
美依の蕩けた顔も間近だし。
真っ赤な顔をしながら喘いで、本当に愛らしいと思ってしまう。
「美依……」
「んんっ……」
激情に攫われ、俺は美依の唇を己のそれで塞いだ。
それが、初めて美依と交わした口づけ。
唇を割り舌を差し入れて、熱くなった口内も犯して。
そう……"犯す"という言葉がしっくりくる。
二人の間には、恋仲のような繋がりはないのだから。
でも、口づけが何だかやたら酔う。
紅でも差していたのか。
甘い味に、鼻を掠める匂いに。
心が煽られ、いつしか口づけに酔い溺れた。
すると、美依が唇を離して見つめてきて。
その煽情的な艶っぽい顔つきに、また内心を乱されていれば……
その口から、はっきりと美依は言葉を紡ぐ。
「帰蝶さん…好きです……っ」
「っ……」
「愛してる、貴方を、私は……」
「美依……っ」
「愛してます、帰蝶さん……!」
(愚かで、愛らしく、愛しい……美依)
その言葉で十分だ。
俺はお前の温もりを忘れない。
温かい肌を、濡れた奥底を、その言葉を。
それだけを忘れず、生きていける。
俺の生は疎まれていた。
温かさを知らずに生きてきた。
だが…一瞬でも愛された事を誇りに思う。
例え、その後嫌われたとしても、
芽吹いた花が、きっと枯れることは無い。