第21章 一世の契り * 帰蝶
「美依……」
背中に咲いた華は何かに似ているな
それをどこで見たかは思い出せない
忘れてはいけないような華だったのに、
「────俺を、刻め」
今は何故か思い出すのを拒んでいる。
「……っあぁっ、ぁんっぁっあっ…!」
俺が抽挿を開始させると、美依は必死にソファの布を掴みながら仰け反った。
背中から尻にかけての線が色っぽいな。
このように、男を誘うような色気もあるのか。
滾る、心が染まって燃ゆる。
音を立てて肌を叩き、奥深くまで侵略して。
掻き分け進んで、それを引き抜いたら内壁を押し広げながら再度ねじ込んだ。
そうして生まれる悦は、酷く甘美で淫靡。
そして……とても満たされる感覚。
ああ、永遠にこうしていたいと思う程。
花に水を与えたように、心が潤っていく。
「美依……」
「あっ…ぁっあっ、だめぇぇ……!」
「それは果てると言う意味か、それとも」
「帰、蝶、さ…っぁあぁ……!」
「好すぎて耐えられないと言う意味か?」
覆いかぶさり腰だけ動かしながら、耳元を噛んで言葉を注いだ。
吐息を混じらせ、熱い音色になるそれは、美依をさらに追い詰めたようだ。
証拠に、中がまた締まった。
それでなくてもきついのに、あまり搾り取られると、反対に根こそぎ奪われてしまいそうだ。
(そのくらい、お前は心地よい)
女の手は取らない、孤独を選んだのだから。
だが、お前は自ら飛び込んできた。
帰れと言ったのに、帰らなかった。
それだけで十分、お前を抱く理由になる。
これが最後、最初で最後。
だから、どうか───………
今だけは、俺を愛していると言ってくれ。
「っ…はぁ……好い………」
「……んっあっぁっ…も、やぁ……!」
「拒むのか?今更、手遅れだ」
「あっぁんっ…帰蝶、さ、ん……っ」
「美依…っ……」
一緒に駆け上がっている感覚。
息遣いやソファが軋む音で、部屋中が濃く染まって。
微かに耳に届いていた雨音も、今は何も聞こえない。
雨が止んだと言うより、美依の嬌声や交わる水音しか耳に入って来なくなったから。
美依しか感じなくなった。
なら、もう一歩踏み込んでいいだろうか。