第20章 君色恋模様《後編》* 真田幸村
「……これは、なに?」
「今日朝から居なかった理由だ」
「……」
「それを引き取りに行ってた、開けてみろよ」
若干疑うように木箱を見つめる美依。
だが俺に促され、美依は恐る恐る木箱の蓋を開けた。
瞬間、美依の表情が驚きに変わる。
そして、食い入るように"それ"を見ながら、掠れた声を上げた。
「指輪……?!」
「おー、本当は祝言で渡すはずだったんだけどな」
「なんで……」
「だって、お前が居た世界では、祝言で絶対用意するモンなんだろ?佐助が言ってたぞ」
佐助に話を聞いてから、美依が喜ぶなら絶対用意してやろうと思った。
こんな装飾品は日ノ本では見ないし、だから南蛮ならば出回っているのではないかと……
そっち系の知り合いをひたすらに尋ねて回った。
そこまでするのも、全ては美依の為。
────愛しているからこそ
何でもしてやりたいし、形として残したい
俺は木箱から指輪を取り出すと、改めてそれに視線を落とした。
煌めく小さな石がはまったそれは、暗い部屋の中でもきらきらと輝いて見える。
こんな風に愛を形に表し、それを贈ってやる事で気持ちを示せるというならば……
俺はこの心のど真ん中にある熱情を、この指輪にたくさん込めて美依に伝えたいと、そう思った。
「こんなのを準備するのだって、お前が大切だからだ。俺にはお前しかいねーって…解るだろ?」
俺は美依の手を取り、優しく指に想いの証をはめてやる。
どの指にはめるか…も佐助に聞いとくんだった。
よく解らないから『右手』の薬指に輪を通せば、それは馴染むようにすんなりとはまった。
そのまま手を口元に近づけ、指輪に口づける。
さすれば、美依は少し頬を赤くして俺を見つめてきた。
「お前に誤解されるような事した俺が悪い。でも、俺の気持ちはずっと変わらない」
「幸村……」
「嫁にしたいと思うのも、こうやって想いを伝えるのもお前だけだ。……すげー好き」
「っ……」
今度はその赤い目元に唇を押し当てる。
泣いていたんだろうな、と思えば心が軋んだ。
もう泣かせはしない、涙を流すなら嬉し涙だけ。
────俺はお前に最上級の愛を伝えたい