第3章 拝啓 愛しい君へ《後編》* 明智光秀
「見てごらん、美依。こんなに濃い蜜が糸を引いている…いやらしいな」
「……っ」
「だが、素直に気をやったな…いい子だ。男の手で導かれた感想はどうだ?」
「こ、んな……っ」
「こんな事、されたの初めてだろう?」
美依の顔を覗き込めば、とろっとろに蕩けていて、目は潤んで、頬も染めて…
果てた後特有の色っぽさに、また心がざわりと波立つ。
美依は恥ずかしそうに小さく俯き、目も泳がせて、それでも口を開けば…
相変わらずの、純粋な美依そのままだった。
「こんな感覚…初めてで、戸惑います」
「……」
「頭真っ白になったし、自分の知らない自分になったみたいで、ちょっと怖いし…おかしくなっちゃう。でも…」
「でも?」
「……っ、すごく気持ち良かった…です」
(……どうやら嫌ではなかったらしい)
率直な思いに、思わず笑みが漏れた。
この口ぶりだと『気をやる』こと自体が初めてだったのかもしれない。
女は男の手によって花開くものだ。
与えてやる事で、自分の知らない感情や感覚を知る。
同時に、それは男にとっての悦びでもある。
美依が俺の手で、また女としての悦びを感じる事が出来たなら、こんな嬉しいことはない。
もっともっと、教えたくなる。
好きな者同士の交わりが、どれほど"好い"のかを。
だが───………
『段階を踏む』という意味では、今日の美依はもう限界かもしれない。
気をやる事が『少し怖い』とも言っていたし。
それに慣れてきてから、また先に進む…でも良いかもしれないな。
「美依…今日はここまでだ」
「え?」
「休むぞ、褥に運んでやろう」
「わっ……!」
俺が軽々美依の躰を抱きかかえると、美依は慌てて俺の首に腕を回してきた。
そのまま、奥に敷いてある褥へと運び…
ゆっくり横たえると、乱れた胸元や裾を軽く直してやる。
本当ならもっと先に進みたいが…
美依を大切にしてやりたいから。
一つずつ階段を登り、いつしかひとつになれたなら。
そう思いながら美依の隣に寝転び、額に優しく唇を押し当てる。
すると、美依は目を丸くして俺を見てきて。
そして、言いにくそうに口を開いた。