第3章 拝啓 愛しい君へ《後編》* 明智光秀
「あの、光秀さん……?」
「どうした」
「今日はここまでって…」
「今日は気をやる所までを覚えただろう、その先はまた今度だ。急いで進んでも…お前が辛いからな」
俺がそう言えば、美依はなんだか驚いたような顔になり、俺を見つめてきた。
俺は確かに普段は意地悪だが…
やっていい『意地悪』とやったら駄目な『意地悪』くらいは心得ているつもりだ。
だが、美依はどうやら違ったようで。
俺の胸元をぎゅっと掴んでくると、少し俯き、消え入りそうな小さな声で言った。
「い、意地悪、です……っ」
「え……?」
「こんな風にしたくせに、ほっとくんですか?」
「……」
「わ、私は……!」
(……っ!)
そこで、顔を上げた美依。
必死に見つめてくる、その顔は…
今まで見た事がないくらい、"良い女"の顔つきだった。
頬を朱に染め、涙目で…
俺を求めてると、丸わかりの顔。
そして、微かに濡れている唇で紡がれたのは、理性を木っ端微塵にするような、そんな台詞。
「光秀さんが、欲しい、です……」
「美依……」
「光秀さんさえ良ければ、そのっ…」
「……っ」
「私に貴方の熱を感じさせてください」
(全く…男殺しの台詞をあっさりと)
美依に言われると、やけに"くる"。
我慢していたものが弾けて…
"欲しい"という渇望が、大きくなって押し寄せる。
必死に堪えていたのにな?
愛しいお前が乱れるのを見て…
昂らない方がおかしいのだから。
『深く愛してやろう』とは確かに書いた。
それを言葉通りの意味にしていいなら…
俺はいくらでも、お前を貫く事は出来る。
「……承知した」
「光秀さん……」
「後で嫌がっても、止めてやらないからな?」
俺は再度美依の襦袢の裾をめくり、膝裏に手を掛けると大きく上に開かせた。
その熱の中心は、ぐちゅぐちゅに蕩け…
改めてそれを見ると、心が昂って無意識に喉が鳴る。
ずっと、この瞬間を待っていた。
美依とひとつになる時を夢見ていた。
欲しい気持ちには抗えなくて…
美依をこの腕に抱きたいと。
それは俺が欲した、唯一の"望み"。