第18章 鴇色の華に魅せられて * 織田信長
────今宵もまた、貴様を愛しく思う
どんな姿だって結局愛らしい。
一生懸命攻めてる貴様も、蕩けながら色っぽい顔つきをする貴様も。
ただ……今度は覚悟しておけ、美依。
俺は美依の小さな躰を褥に寝かせ、そして抱き締めて穏やかな眠りに落ちた。
今日の貴様は温かすぎて暑いくらいだ。
でも、そんな肌の温度がまた心地よい。
起きたら、どんな反応をするやら。
忘れていたら、全て話してやるのもいい。
その時の恥じらう姿が想像出来るな。
そんな事を思いながら…優しい温もりに包まれていったのだった。
*****
秋の朝は、やたら寒い。
昼間がまだ温かいせいか、朝晩はめっきり冷え込む。
だが、俺は貴様がいるから寒さ知らずだ。
今朝もそう…その体温が気持ちいい。
「あれ、信長様…あれっ……?」
美依の慌てたような声が聞こえた気がして、俺は沈んでいた意識をゆっくり浮上させた。
少し微睡んで確認すれば、美依はきちんと褥の中にいて、俺の腕を枕にしながらぴったり寄り添っている。
でも顔が戸惑っているな。
そんな事を思いながら……俺は寝起き声で美依に話しかけた。
「……おはよう、美依」
「信長様、おはようございます。あ、あの、私……?」
「どうした」
「宴に参加していた筈だったんですが、いつの間に天主に戻ってきて、こうなりました……?」
(……予想していた通りだな)
何が何だかさっぱり解らないといった様子の美依。
昨日はあれだけ泥酔していた、確かに記憶がなくなるのは無理ないかもしれない。
だが、昨夜の件は事実であった事だ。
それを"ない"ものにするには、少々癪と言うもので。
俺はくくっと笑うと、枕にしている腕で美依の頭を抱えて引き寄せる。
そして、その顔を意地悪く覗き込んだ。
「忘れるとはいい度胸だ、貴様」
「えっ…何かありました……?」
「どこまで覚えている?」
「確か政宗と光秀さんにたくさんお酒を勧められて飲んで…眠くなってしまったんです。少し休もうって邪魔にならない所で休んでいたはずだったんですが……」
つまり昨日の行為は丸っと覚えていないと。
俺を攻め、乗り上がって乱れた事も。