第17章 太陽と月の恋人《後編》* 秀吉、光秀
「お前、美依の体を調べて大丈夫そうだなって言ったよな?」
「ああ、蜜口は特に傷ついていなかったし、中から精液も流れてこなかった。挿入はされても精は出されていなかったのだろう」
「なら…犯した男の子を孕むって事はないよな」
「俺やお前の子は孕む可能性はあるがな」
光秀が秀吉を見ながら意地悪く言うと、秀吉は特に気にする様子もなく『それは承知の上だ』と答える。
昨夜、美依の腹の中には、散々精を注いだ。
昨夜だけではない、日替わりの恋人だった時も然り。
それはお互い様なのだから、今更である。
こんな事を続ければ、美依は確実に孕むだろう。
だが美依が孕めば、その子を認知するだけ。
そして、その覚悟はとっくに出来ている。
むしろ覚悟が出来ないのなら、抱くという行為に及ぶ事は許されない。
互いにそう思っているのだから、確認などは必要ないとすら思う。
秀吉は美依の小さな頭に手を乗せた。
優しく撫でてやりながら、光秀に向かってさらに言葉を続ける。
「なあ、光秀。俺、考えてたんだが……」
「奇遇だな、俺もそれを考えていた」
「……まだ何も言ってねぇ」
「認めたくはないが、お前と俺は似ているらしいからな。どうせ同じ事を考えていると思っている」
「美依との今後の事だ」
「やはりな。だが…お前と結論は同じだと思うが」
「……そうか」
────このまま三人で、しばらく
二人は視線を合わせて、ふっと笑う。
美依は『どちらかを選んで、どちらかを失うのが怖い』と言っていた。
期間限定の恋人になり、同じように気持ちは膨らんでいったと。
失いたくないと思ってもらえたのは、好きになってもらえた証拠。
いずれはどちらかを選ばなければいけないのかもしれないが……今それを必要としないのなら美依の気持ちを大切にしたい。
もちろん自分だけのものにしたいという気持ちを、拭えないのは確かだ。
それでも美依を独占するのは、今は時期ではないような気がする。
『いつか』は、まだ先の話。
今はただ……美依の心を守っていこうと。
そう結論づけて、二人は穏やかに美依を見つめたのだった。