第17章 太陽と月の恋人《後編》* 秀吉、光秀
────お前は、どちらの恋人?
でも、そんな事今夜はどうでもいい。
求められたら、与えるだけ。
与えたら……満たされるだけ。
そう、それでいい。
少なくとも、今夜だけは。
お前は───………『俺達』の恋人だ。
「美依…っもっと……」
「ぁっあぁん…イイよぉ…っ!」
「はぁっ…出、る……!」
その日、人払いをしたその部屋は濃い桃色の空気に包まれ、それを皆が察するも誰も近寄らなかった。
そう、それは"三人だけの世界"なのだと。
それを皆が認めざるを得なかったのが事実だ。
美依は二人に癒され、躰には二人を受け入れ、意識を飛ばしていつしか眠りについた。
太陽と月が混在する世界で、秀吉と光秀が笑ってこちらに手を差し伸べている。
淡く儚く、それでいて優しい。
そんな夢を見ながら、美依はいつまでもそこに居たいと───………
叶わぬ願いを、切に祈ってしまったのだった。
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「そのように取り計らってくれ」
「かしこまりました。あの…美依様は……」
「大丈夫だから心配するな」
柔らかくも有無を言わさぬ秀吉の口調に、女中はそれ以上は詮索せず足早に去っていく。
秀吉はそれを見送り、再度廊下から美依と光秀のいる部屋に戻って見ると……
未だ眠る美依の横に光秀が寝転び、髪を梳いてやっているのが解った。
「上手く説明したか、秀吉」
「大丈夫だろ、まあもう察してますって感じだったけどな」
「それは仕方ない。後で信長様には言われるだろうがな」
「美依は信長様の寵姫と間違われて襲われた、それは御報告はしなきゃならないからな。その時に…言われるだろ、確実に」
秀吉も苦笑しながら、美依を挟んで反対側に座り直す。
そして、優しげな眼差しで美依を見下ろした。
美依はすやすやと穏やかな寝息を立てて眠っている。
昨夜二人を相手にし、強請った淫らな美依とは想像も出来ないくらいあどけない寝顔。
そんな美依を見ながら、秀吉はぽつりと思っていた事を口にした。