第17章 太陽と月の恋人《後編》* 秀吉、光秀
光秀と別れ、市などをぶらぶらと見て歩いて、色々と考えて。
そして夕刻、さあ部屋に戻ろうとした時。
いかにも荒くれ者な雰囲気の男達に声を掛けられたそうだ。
『こいつ信長の寵姫だ、捕まえろ』
多分信長様を良く思わない連中。
間違って噂されている話を男達は信じたのだろう。
そして、美依は織田家ゆかりの姫としてそこそこに顔も知れ渡っている事から……
男達は勘違いしたまま、捕まえようと追いかけてきたらしい。
逃げたが、当然男の足に敵う訳もない。
すぐさま捕まり、路地裏に連れ込まれ……
押さえ付けられて、いいように犯されたと言う。
「途中で政宗が発見してくれて、保護してくれたの。でも……その時は、もう」
「犯された後だった、と。さっき女中達に抵抗していたのは?」
「……本当に犯されたのか、体を調べるって言うから……その、中とか……色々」
「……なるほどな」
多分女中達は、美依の『女』の部分を調べようとしていたのだろう。
傷ついていないか、体内に精液が残っていないか……
それは多分女中達の独断ではなく、誰か…例えば政宗あたりにそうしろと言われたからかもしれない。
美依がそれを拒んだと言うのは、やはり見られたくなかったからか。
"犯された"という事実が本当なら、尚更。
美依の瞳に、また溢れんばかりの涙が溜まる。
一度瞬きをすると、それは一気に溢れ出し…美依からは悔いるような言葉が零れた。
「これはきっと罰なんだよ……」
「罰?」
「私が秀吉さんも光秀さんも選べないから。どっちにもいい顔して、フラフラしてるいい加減な私だから……!」
「……」
秀吉と光秀は顔を見合わせる。
どっちにもいい顔してるなんて、美依がいい加減なんて、そんな訳がない。
むしろ、拒まない美依をいいように利用して抱いていたのはこちら側だ。
美依には嫌とも言わせず、気持ちを押し付けた。
だから、美依に罰なんかある訳ないのに……
なのに、美依は自分を責めるように言葉を続けた。
「二人は私を好きって、傍に居てくれって言ってくれたのに。私はどちらも選べなくて、流されるまま抱かれて…それでも気持ちは決められなかった。だからバチが当たったんだよ…!」