第16章 太陽と月の恋人《前編》* 秀吉、光秀
「あっ…ぁんっ……!」
────もうお前を離したくない
「美依、美依……っ」
「光秀さ…っぁあ……っ!」
穿いて、奥深くを感じて。
抽挿を繰り返しながら、躰の下で悶える美依を見下ろしたら、美依も見つめ返してきた。
真っ赤に潤んだ瞳、今は俺しか映していない黒真珠。
そうしてずっと、俺だけを見ていてほしい。
秀吉の事など忘れてしまえ、そして……
俺を選べ、美依。
俺の方がきっとお前を深く愛している。
だから……ずっと傍に居てくれないか。
「……っ………」
「……っあぁぁぁ!」
腰を震わせ、幾度目かの白濁を美依の腹に注ぎ込むと、美依自身も甘やかに果てた。
二人で荒い息を整えながら、見つめ合うと……
どちらかともなく唇が重なり、それは軽く触れ合うだけで離れていった。
気持ちが溢れて止まらない。
今宵で終わりだと思えば、尚。
だから、美依を繋ぎ止めなければ。
まるで懇願するように───………
口から零れるのは、みっともなくも赤裸々な感情。
「美依…俺の傍を離れるな」
「光秀さん……」
「秀吉の元には行かないでくれ、頼む」
「っ……」
「お前以上に愛せる女はいない」
「俺はお前を狂いそうなほど愛しているよ。だから、俺を選んでくれないか。お前が秀吉に抱かれる姿はもう見たくない、お前は俺だけのために咲く華でいいんだ……そうだろう?」
────何故、こんなに愛してしまったのか
女にはさほど興味はなかった。
情報収集のために、女と関係を持つことはあったが、所詮それは気持ちなど伴わないものだ。
俺には愛など不要、大望を果たせるためなら自らの事は二の次だった。
けれど、お前と出会い……
植え付けられた灼熱の恋情は、俺を酷く揺さぶる。
お前しか要らない、そう思う程に愛してしまった。
何故、秀吉は美依を選んだのだろう。
言い寄る女など、山ほどいるだろうに……
何故敢えて、辛い恋を選んだ?
お前は……もっと楽な道も沢山あったはずだ。
擦り切れるように心が痛い。
痛くて痛くて堪らない。
どうか今日よ、終わらないでくれと……
馬鹿な願いを本気で祈るくらいに。