第16章 太陽と月の恋人《前編》* 秀吉、光秀
「ぁっ…あんっ、秀吉さっ…!」
「はぁっ…美依、もっと……」
「あっぁっ、そんなしちゃだめぇ…!」
乱れる、揺れる美依の躰。
こうして後ろから穿くと、背中から腰、尻への線がやたら色っぽいのだと、改めて気がついた。
小さな躰に覆い被さり、腰だけを動かして鋭く中を抉る。
さすれば強い快感が己を支配し……
それに呑まれるように、えげつなく美依を攻め立てていく。
(もう、美依を抱けないかもしれない)
"自分の日"は今日で最後。
明日は光秀の日、それで"恋人のお試し期間"は終わりだ。
もし美依が光秀を選んだら、もしくはどちらも選ばなかったら……
きっと、二度と美依に触れる事は出来ないのだろう。
だから、今夜が事実上最後の夜になる。
それを思えば…もう止めてやれない。
もっと欲しい、美依が欲しい。
そんな激情に駆られて、ひたすらに貪った。
「…っ出すぞ、中に……!」
「あぁぁぁっ……!!」
「…っぁ、出る……っ……!」
美依、行かないでくれ。
ずっと傍に居てくれ。
お前は俺のものって胸を張って言いたい。
光秀の所になんか行かずに……
俺を選べ、今すぐに。
そうすれば、俺達はすぐに真実の恋人だ。
心が切れそうに痛い。
痛くて痛くて、堪らない。
お前は俺の前だけで乱れる華で、
────俺で上書きするから
お前に残る光秀の記憶は…忘れてくれ
「ん……?」
俺が意識を浮上させると、一緒に眠ったはずの美依が腕の中にいなかった。
すでに障子の向こうは薄明るい。
朝になったのか……と思い視線を泳がせれば、美依が小さな鏡台の前で身支度を整えているのが解った。
「美依……?」
「あっ秀吉さん、おはよう!先に布団から出てごめん、でも私もう行かないと」
「……」
「光秀さんが部屋に迎えにくるから、今日は逢瀬をする約束なんだ」
一旦こちらに振り返り、ニコッと笑った美依。
そして再度鏡に向き直り、身支度の続きを始める。
そうか、いつもは美依の部屋で抱いていたが、昨夜は御殿に連れてきてしまったんだ。
それを思いながら、俺はぼんやりと美依を見つめた。