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【イケメン戦国】新篇 燃ゆる華恋の乱☪︎華蝶月伝

第16章 太陽と月の恋人《前編》* 秀吉、光秀




「ん……?」



その日の夜半過ぎ。
光秀が乱れた夜着を軽く整えながら廊下に出ると、中庭に面した外縁の所に秀吉が座っていた。
こちらから見ると背中姿なので顔までは見えないが……
その哀愁漂う後ろ姿に光秀は苦笑すると、静かに近寄ってその隣にゆっくり座る。

それに気がついた秀吉は、気怠げに光秀に視線を移し、ぽつりのその名前を呼んだ。



「光秀……」

「お前、まさかとは思うが部屋の前で立ち聞きか?人の閨事を伺うとは、性格が悪いな」

「うるさい、お前も昨夜はそうしてただろ」

「おや、気づかれていたとは」

「当たり前だ。……美依は?」

「疲れてぐっすり眠っている。……だいぶ無理をさせたからな」



光秀の言葉は、その情事の激しさを物語っていると。
それを理解した秀吉は、特にそこを追求することもなく『そうか』と一言返した。
昨夜の"自分の日"には、美依にはだいぶ無理を強いた。
己がそうしたのに、光秀にするなとは言えない。

そう、光秀も美依を愛しているのは解っているからだ。

秀吉はそれを思い、天を仰ぎながらため息をつく。
そして、漏れた言葉は……
秀吉は然り、光秀も常に心の中にある感情。




「────こんな関係、不毛だよな」




『日替わりの恋人』となって、早十二日。
ある日は秀吉の、ある日は光秀の恋人である美依は、驚くほど素直に応じてくれている。

そう『お試し期間』であるにも関わらず、体の繋がりを求めれば、それを合意してくれた。
まだ本当の恋人ではない、そして美依自身の気持ちも決まっていないはずのに……
求めれば、頷いてくれた美依。
それにつけ込んで、幾度となくその小さな体に熱を注いだのは、紛れもない事実だ。

光秀は嘲笑にも似た笑みを浮かべると、秀吉と同じように天に視線を向ける。
そこには、すでに半月も過ぎた月白色の月が浮かんでいて、冴々と輝いていた。



「それは禁句だ。どっちみちあと二日で終わりだろう」

「……お前は何回あいつを抱いたんだ、光秀」

「今日含め二回だな」

「俺と同じか、さすがに最初は我慢してたんだけどな。……やっぱり欲しくて駄目だった」



初めは互いに罪悪感があった。
まだ正式に自分のものではない故に、体を重ねるのはご法度だと。





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