第15章 日華姫ーあの子の誕生日ー * 徳川家康
「はぁっ…好い……」
「熱い、ね……」
「俺のせい?」
「二人の、せいだよ……」
さっきと似たような会話を繰り返し、美依の答えに少し笑ってしまった。
お互いで熱くなれるならいいね。
荒れる息を整えながら、また触れ合う。
じゃれるように口づけを繰り返したら……
幸福感で満ちて、胸がいっぱいになった。
「もう一回……しよ、美依」
「ん……いいよ」
「────愛してる」
「あっ…ん……っ」
真夏の蜜夢はまだこれからだ。
愛し愛され、想いを交わして。
契り合える悦びを、全身で感じたら……
俺達の無敵の愛がまた、華開く。
(いつまでも、極彩色に咲き誇るから)
一生、一緒に居よう。
大切な日は毎年一緒に祝って……
歳を重ねてくしゃくしゃになっても、笑い合えたらいいね。
俺達は飽きることなく抱き合いながら、また一際お互いの絆を深くした。
雨降って、地固まる。
少しの悶着は、関係を深くするいい刺し味になった。
こんな風に時にすれ違って仲直りして、俺達はまた一緒に歩き出すのだと……
それを改めて実感して、愛する愛しい子を力いっぱい抱き締めた。
*****
「美依、誕生日おめでとう!」
美依の誕生日当日の夜。
安土城の広間は、宴でそれは賑やかな雰囲気になっていた。
武将達は然り、皆美依を祝いたいと広間には徳川家の家臣まで集まり、また慶次が旅芸人なんて呼んだものだから余計に雰囲気が華やかになる。
うるさいのは苦手だ、でも……
美依が喜ぶなら、それはそれでいいかな。
本当に美依は皆に愛される子だと、それは嬉しい半面、少しだけ複雑な気持ちがあるのも確かだ。
「ほう…その小袖は家康が仕立てたのか。品のいい柄で、貴様によく似合っている」
「ふふっ、ありがとうございます、信長様」
美依の所には、先程から信長様が酌をしに来ている。
祝いの席だからと、あの信長様が酌をしに来るなんて、よっぽど美依に甘い証拠だ。
まあ、文句も言えないけどね。
俺が美依の隣で、小さく息をついたら……
信長様はそんな俺の様子に気が付き、不敵に笑みを浮かべた。