第15章 日華姫ーあの子の誕生日ー * 徳川家康
「家、康っ……」
すると、美依は顔だけじゃなく俺の方に躰ごと向き直り、下から見上げてきた。
見れば瞳は潤み、煽情的だけれど何か言いたそうな、そんな顔をしている。
俺が『どうしたの』と問いかければ、美依はなんだか泣きそうな声で、俺に言ってきた。
「私、本当に大ばかだよ。こんなに想ってくれてるのに不安に思ったりして…この数日間の私にばかって言ってやりたい」
「あんたのせいじゃないから」
「私、こんなに想われて幸せだよ。家康こそ…ずっと私の傍で輝いていてね。家康はこの乱世を終わらせる光なんだから」
「美依……」
「愛してくれて、誕生日を祝ってくれて、本当にありがとう。こんな幸せ者は他にはいない、私も……家康を愛してる」
(────ああ、この瞬間が全てだ)
小袖が上手くいかなくて挫折を考えた時、美依の喜ぶ姿だけを思い浮かべていた。
喜ばせたいなら頑張れと、自分を奮い立たせた。
それが全て……今報われたよ。
もう、あんたを手放せない。
不安にさせる事もあるだろうけど……
それを感じさせた時は、抱き締めて甘やかして。
美依とはそうやって、また絆を深くしていくんだ。
「美依……」
「んっ……」
どちらかともなく重なった唇は、すぐさま深くなって絡み合う。
柔らかな舌同士が触れ合い、水音を立てて……
また溶けだした表情になった美依を見たら、堪らなく愛おしさを覚えた。
好き、本当に好き。
馬鹿の一つ覚えみたいにそう思う。
それは際限なく溢れて止まらなくなって。
だから……ひとつになりたい。
あんたと混ざり合って、とろとろに蕩けて。
そんな刹那の幸せは、あんたとでなければ得られない温もりなんだ。
「はぁっ…美依……」
「家康……」
「欲しい、あんたが。頂戴…あんたの全て」
その猛った雄を剥き出しにすれば、美依は期待したように見つめて息を飲む。
こんな本能丸出しの俺を受け入れてくれるのも、あんただけだから。
俺は美依の泥濘を掻き分けて、その奥の秘蜜を暴く。
俺以外には絶対に触れさせないそこは……
至福の幸福を感じられる、俺だけの特別な場所。