第15章 日華姫ーあの子の誕生日ー * 徳川家康
「誕生日おめでとう。もう日付越えただろうから、言ってもいいよね」
「ありがとう……家康」
「大切なあんたの誕生日だから特別にしたかった。だから小袖作りにも挑戦したし…まあ俺のせいで揉めたけど」
「そ、それはっ……!」
「しー、黙って聞いて。俺…夏は嫌いだったんだ」
俺がそう言うと、美依は驚いたように目を丸くさせた。
俺自身冬生まれだし、暑いのは苦手だし。
暑くて集中できなくて、本を読むのも進まない。
そんな夏は…俺にとっては嫌い以外の何者でも無かった。
でも、あんたが夏生まれと聞いて……
それはあっという間に覆った。
「でも、今は嫌いじゃない」
「なんで?」
「あんたの誕生日があるからに決まってるでしょ」
「家康……」
「いつの間にか、あんたの誕生日がある夏が待ち遠しくなってた。あんたは太陽みたいな子だから…夏生まれなのも納得したし」
いつも俺を照らし続ける光。
鬱陶しいと思っていたはずなのに、今はそれを望んでいる自分がいる。
眩しく輝き、いつも俺の事を光の下に引っ張りだして……
そして、にっこりと優しく笑ってくれるから。
だから、俺は感じずにはいられない。
この子が居なくなったら、俺の世界も終わってしまうのだと。
俺は美依の額の髪を掻き分け、そこに唇を押し当てる。
たくさんの愛情を込めて……
心にある赤裸々な気持ちを、驚くほど素直に紡いでいく。
「美依、ずっと隣で笑っていて。ずっと傍で、あんたの大切な日を一番に祝わせて。俺の太陽だから、これからも俺を照らしてほしい。────愛してる、誰よりも何よりも」
────生涯が終わるまで、命は共にある
一緒に笑って、一緒に泣いて。
でもあんたが居れば、心は毎日晴れ模様だ。
傍に居てくれるだけで、俺は満たされる。
願わくば、あんたもそうであってほしい。
(温もりも優しさも与えてくれたあんたに)
たくさん返さなきゃいけないものもあるから。
それは、一生かかっても返せないかもしれないけれど……
どうか、受け取ってほしい。
気持ちも、熱も、溢れて止まらない形ないものも。
全て全てあんたのものだから、美依。