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【イケメン戦国】新篇 燃ゆる華恋の乱☪︎華蝶月伝

第15章 日華姫ーあの子の誕生日ー * 徳川家康





────だが、この行動は
周りから見たら、どんな風に見えるのか。
俺は何故、気づかなかったのだろう?





「家、康……」





その時。
後ろから聞こえた掠れた声に、俺はなんの疑問も持たずに振り返った。
瞬間、思わず目を瞠る。
そこには、今まさに俺が会いに行こうとしていた人物が立っていたからだ。



「美依……」

「ご、ごめん、お邪魔だったね……」

「え?」

「二人で、ごゆっくり……!」



美依は訳の分からない言葉を残し、背を向けて走り出してしまった。
俺は頭が真っ白になる、お邪魔だったねって、二人でごゆっくりって。

……まさか、誤解されたのか?

瞬時にそれを理解すれば、冷水を浴びせられたような心地になった。
襟を直されるなんて、美依にしてみれば仲睦まじい関係に見えたのだろう。
それに、今は俺に対して変な噂が立ってる。
『他の女と逢引しているのではないか』
それを美依が信じていたなら、それで不安に思っていたなら……

今の行動は絶対駄目だろ。
美依の不安に『決定打』を与えたようなものだ。



「……っ美依!」



俺は急いで美依の後を追い、駆け出した。
誤解を解かねば、あの噂も嘘だと言ってやらねば。
まさか美依が居合わせるなんて。
俺とした事が油断していた、贈り物が仕上がった事で隙が出来ていたか。
もちろん俺にも店主の娘にも、やましい事は一切ないけれど……
美依にとってみれば、そんなのは関係ない。
見た事だけが真実なのだから。



「待って、美依!」

「っ……」



走り去る小さな背中を焦って追い掛ける。
案外逃げるのが早い、だが俺のが当然の如く足は早いから。
走って走って、路地裏に入った所で美依には追いつくことが出来た。

俺は美依の腕を引き、振り返ったところで民家の壁際に美依の体を追い詰める。
荒く息をする美依を自分と壁の間に閉じ込め、腕で囲って逃げられないようにしてから……
俺は美依の黒真珠みたいな瞳を見つめた。







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