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【イケメン戦国】新篇 燃ゆる華恋の乱☪︎華蝶月伝

第12章 愛逢月の秘蜜《前編》* 政宗、家康





────七夕の日の夕方

私はその日気分晴らしに、市を訪れていた。
もう空が茜色に燃えている。
民家からは美味しそうな匂いとかして…夕餉の準備でもしているのかもしれない。
そんな中を露店を見ながら歩く。
宴に何か美味しいものを買っていこうか、多分政宗あたりが美味しい料理を用意しているとは思うけど……


『政宗』


そのワードが頭に浮かんだだけで、なんか落ち着かなくなった。
嫌だな、お酒の失敗にしてしまえばそれでいいのに。
そして、歩きながら辛子色の反物が目に入り、家康っぽいな…と思ったら、また心臓が速くなる。


(政宗、家康の単語は今の私に禁句だなぁ…トホホ)


政宗と体を重ねた事はもちろん、普段では考えられないくらいスキンシップを取ってきた家康にも、かなり打撃を受けていた。
もう色々考えすぎて、頭パンクしそうだよ。
そんな状態で市を歩いていたら……



「お嬢さん」

「?」

「あんただよ、あんた!」



一番角の露店から声をかけられた。
視線を向ければ、恰幅のいいお兄さんが小さなお店を開いている。
和菓子のお店なのか…金平糖を筆頭に色とりどりの可愛らしいお菓子が敷布の上に並べられていた。



「随分悩ましげな顔してるな、良かったら菓子でも持っていけ」

「へ?」

「美味いぞ、きっと悩みも吹っ飛ぶぜ」



手招きをするので、興味を惹かれ私は店先に腰を下ろす。
すると、お兄さんは小さな箱に入ったお菓子を差し出してきた。

(わっ、可愛い…!)

練り切りらしい、花を象られた桃色のお菓子が入っている。
その可愛らしさに、一瞬で一目惚れをしてしまった。
でも、数は3つだけ。
3つじゃみんなの分としては明らかに足りない。
でも───………



『美依…お前、可愛いな』
『……本当に、なんでもないの?』



(政宗、家康……)
このお菓子をきっかけに、話してみようかな。
政宗には、この前の行為をどう思っているのか。
家康には…なんであんな事をしようとしたのか。

ふわり…とお菓子からは甘い匂いが漂って。
それに釣られるように、私は箱に手を伸ばした。



「おいくらですか?」

「いいから持ってけ、悩みが解決するといいな!」

「わぁ…ありがとうございます」





────今考えれば、
もう少し疑えば良かったのに








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