第12章 愛逢月の秘蜜《前編》* 政宗、家康
(情けない事に、すごく気持ち良かったんだよね)
政宗は私の弱い場所をすぐさま見つけ出し、私をトロトロに溶かしてしまった。
きっと"こういう"スキルが高いんだと思う。
悦ばせ方とか、うまく言えないけれど。
それに───………
『美依…お前は、可愛いな』
熱っぽい青い瞳、囁く甘い声。
汗ばんだ肌とか、その匂いとか……
そんなのが、ずっと感覚に残ってる。
あんな政宗は……初めて見たから。
『んっ……美依………』
────あんな政宗を見て
今更普通になんて……出来ないよ
「……美依?」
「っ!!」
声を掛けられ、思考が一気に現実に戻る。
気がつけば、家康が不思議そうに顔を覗き込んでいて……
その深い緑の瞳には、頼りなく困ったような顔をする私が映り込んでいた。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫……」
「顔、真っ赤だけど。何考えてたの」
「な、なんでも、ないよっ……!」
(昼間から、いやらしい事ばっかり考えて…私ってば!)
何考えてたかなんて、言える訳もない。
断片的に頭にちらつく、私の上で快感に浸る政宗。
すごく色っぽかった、男の人なんだと思った。
あんな姿を見て、思い出さない方が無理だよ。
すると、私の顔を間近で見ていた家康が小さく息をつき、そのまま私の肩を掴んだ。
そして、ぐっと押される。
壁際に体を追い込まれ、びっくりして目を見開けば家康は私を壁に閉じ込めながら、何の感情も読み取れない顔で見つめてきた。
「……本当に、なんでもないの?」
「っ……」
「顔真っ赤にするような事、考えてたとか」
「あ……」
家康は左手を壁に付きながら、右手で私の顎を掬う。
親指で下唇を撫でられてしまい、その色っぽい仕草に一気に顔が熱を帯びた。
家康がこんな風に触ってくるのは珍しい。
その翡翠の瞳は濃く燃えていて、まるで緑の炎みたいだ。
「家、康っ……?」
問い掛けても、家康は見つめてくるだけで答えない。
こんな風に私を壁に追い込むなんて、普段の家康からは全く想像もつかない事だ。
何を考えて、こんな事するんだろう。
そんな風に思った瞬間。
まるでそうする事が必然のように、家康がゆっくり顔を近づけてきた。