第12章 愛逢月の秘蜜《前編》* 政宗、家康
「……出たくないなら、それでもいいんじゃない」
「え……」
「あんまり乗り気には見えないから。まぁ、この前もあんた派手に酔っ払ってたしね」
「あ、あははは………」
(見られてたのか…当たり前だけど)
私はこの前の宴の時、光秀さんにお酌をされるがままお酒を飲んで、見事に酔っ払ってしまった。
飲み口がいいからと、飲み過ぎた。
頭がふわふわして、秀吉さんとかにもすごく心配されて。
……それだけじゃ終わらなかったんだけど。
だって、あの夜───………
「あの時政宗さんが部屋まで送ってくれたんでしょ、ちゃんと介抱してくれた?」
「!!」
すると、家康が私の心を読んだかのように、そのど真ん中を突いてきた。
いきなりの核心をついた質問。
私はその質問に、不自然なまでに驚いてしまって。
思わず手をぶんぶんと振りながら、焦ってしどろもどろに答えた。
「ちゃ、ちゃんと介抱してくれたよ!」
「……」
「な、何もなかったし、うん!」
「……そう」
(何も無いなんて大嘘……ごめん家康!)
心の中で、家康にめいっぱい詫びる。
家康は私の態度に怪訝な表情を浮かべて。
それ以上何か言えばボロが出てしまいそうで、私は口を噤んだ。
政宗に連れられ、部屋に戻った私。
お酒のせいで体が熱くて、それで……私は政宗と一夜の関係を持ってしまったのだ。
確かに政宗は介抱もしてくれた。
お水を飲ませてくれたり、布団に寝かせてくれたり。
でも……ね。
あの日の私はちょっと変だった。
すごく人が恋しいと言うか、どこか寂しくて。
『どうした、美依?』
『なんか…すごく、触れられたい』
『……』
『体が火照って、なんか寂しいの』
そんな会話を、政宗とした。
それが引き金になったのだから、完全に私から誘った事になるんだと、そう思う。
『触れられたい』『火照って寂しい』
私は、なんてとんでもない事を言ったんだろう。
そんなの『抱いてください』って言っているようなものだ。
お酒に酔って抱いてくださいなんて、絶対困った筈なのに……
政宗はそれに応えてくれた。
私の事を、それはそれは優しく情熱的に、愛して蕩けさせてくれたのだ。