第11章 黒と蜜、紅と熱 * 信玄END
「すごく好いな…堪らない。挿しただけで、果ててしまいそうだ」
「っ…信玄、様……」
「君も同じ気持ちならいいんだが」
「私も…すごく、気持ちいいです……」
美依が瞳に涙を溜め、しっかりと俺を見つめながら伝えてきた。
きっとそれは、痛みの涙じゃない。
その熱を帯びた視線は、嘘なんてついてないから。
俺は少しだけ引き抜き、一回奥を軽く突く。
すると、美依は色っぽく首を逸らし、堪らないと言ったように艶っぽく啼いた。
(腰にくる、いい声だ)
それを聞いただけで滾った雄が質量を増す気がする。
そのまま徐々に腰を動かし、俺は抽挿を開始させた。
ぬるぬると気持ち良く熱は滑り、直接的に甘美な刺激が俺を襲ってきて……
荒れる息を堪える事もせず、律動を繰り返していく。
「はぁっ…美依……っ」
「あっ…ぁんっ、あっぁっ……!」
「名を、呼んでくれないか、美依っ……」
「ぁっあっ…信、玄、さまぁ……!」
「そうだ、君の中に居るのは、俺だ……っ」
じゅぷっじゅぷっ
結合部分が擦れて、淫音を立てる。
その音に混じって、共鳴するように美依の啼き声が響き渡っていく。
布擦れの音も、熱い吐息も、汗の匂いも。
全てが『君を抱いている』と実感出来て、俺を高ぶらせる材料だ。
小さな宿の一室、濃密な空間。
熱い息が溶けて、重なる月影が落ちる。
お互いだけを瞳に映せば……
もうこの世には俺達だけしか存在しないような心地になった。
────問題は山積みだ、でも
今だけは愛しい者を考え、抱いていたい。
この子の傷や闇を癒し、そして……
その心に俺だけを想うように。
「信、玄、さまぁ……っ!」
「んっ…美依……っ」
そして、それしか知らないみたいに互いの名を呼び合う。
引き寄せられるように唇が重なれば、絡み合って貪るようにすぐさま深くなる。
甘い、甘い美依の味。
それは媚薬のように躰に浸透し、俺をえげつない獣にさせた。
やっぱり男女の交わりは綺麗だけではいられない。
お互いの色に染まり合い、そして……
愛しさも混じって、心を芯からひとつに溶け合わせるのだ。