第11章 黒と蜜、紅と熱 * 信玄END
「んっ……っ………」
柔らかく白い肌を、唇で辿る。
首筋から鎖骨を滑り、胸の膨らみの上部を強めに吸うと、美依は息を詰めて肌を震わせた。
少し上目遣いで顔を伺えば、どうやら自分の手の甲を必死に噛んでいるようで。
声を上げるのを我慢しているといった感じか。
俺はふっと苦笑し、上半身を持ち上げると、その噛んでいる手を掴んで優しく引き剥がした。
すると、美依は真っ赤な目をして『何するんだ』と視線で訴えてきたが……
俺は片目を瞑り、その訴えを即座に却下する。
「声を我慢するな。君の気持ち良さそうな声が聞きたい」
「で、でも……っ」
「何か理由があるのか?」
「は、恥ずかしくて、そのっ……」
(……随分初心な反応だ、可愛くて参るなー)
信長に散々抱かれてきたとは思えない程、初々しい反応。
これは煽られる、もしかしたらあの魔王もこんな美依の姿を好んでいたのかもしれない。
だが───………
そんな初心な姿と相反して、襦袢がはだけて見える躰にはたくさんの所有痕が華を咲かせている。
それは、信長に執拗に愛された証拠だ。
白磁の肌に、鮮やかに主張するソレ。
まるで…"美依は渡さない"と牽制しているようで。
────虫唾が走るんだよな
「恥ずかしがる必要はないだろ、ここには俺と君しかいない」
「そう、ですけど……っ」
「……これから、もっと恥ずかしい事するんだろう?」
「っあ……!」
その憎しみしか覚えない華を枯らすように、俺はその痕の上からきつめに吸い上げた。
一つ一つ、自分のものへと変えていかねば。
美依が痛くないように、丸い胸を手で包んで、やわやわと揉みしだきながら痕を上書きしていく。
さすれば、美依は堪らないといったように、今度こそ甘い声を漏らし始めて。
その響きは自身の腰をぞくぞくと疼かせ、熱くさせた。
「あっ…やぁ……信玄、さまぁ……」
「こんなにたくさん痕を付けられて…すぐに忘れさせてあげよう」
「んっ…はぁっ……」
「君の綺麗な肌には、俺が咲かせた華の方が似合う」
肌を啄む甘やかな音。
絶え間なく響くそれは、狭い部屋の中を桃色の空気に染めていく。
それはまるでこの子を救い出すための、神聖な儀式のようにも思えた。