第11章 黒と蜜、紅と熱 * 信玄END
『貴方は狡いです、私、私は……
そんな貴方に抗えないじゃないですか』
瞳を赤くさせ、君は煽情的に言った。
そう答えるのも、予想の範疇だった。
俺は君を内心から絆し…手に入れようとしていたのだから。
そう、俺は狡い大人だ。
『待つ』と言いながら情報収集は欠かさなかった。
そうする事で見えてきた、君と信長の関係性。
あの男に、君は抱かれている。
それを思えば、酷い劣情が俺を蝕んだ。
でも恋仲ではないという事は、迷ってるのだと。
ならばまだ、付け入る隙があるのだと確信した。
君を優しい言葉や態度で惹き付けて。
心は俺に向くように仕向け、後は君が信長に嫌われ傷つけば…癒し奪い取る理由が出来る。
そう───………
君が傷つく事もいとわない、酷い男なんだ。
それでも俺は、君が好きだよ。
その気持ちはきっと誰にも負けてない。
そして、誰よりも幸せにしてやりたい。
だから俺の腕に囚われるんだ。
酷い男を挽回させてくれ。
大丈夫、君は俺が一生守ってやる。
魔王の手から救い出すから──……
君のもっと綺麗な笑顔を見せてくれ。