第10章 黒と蜜、紅と熱 * 信長END
「ならば…もっと触れてやる」
「あっ…ぁん……っ」
鎖骨から唇を滑らせ、胸の膨らみを啄んだ。
桜色をした胸先を、舌で嬲って軽く吸って。
美依の弱い場所は熟知している、"ここ"も可愛がってやれば、もっと好さそうになるから。
案の定、美依はよがって甘ったるい声を響かせる。
花芽は膨らみ、ツンと尖って唾で艶めかしくなり……
そんな愛らしい箇所を執拗に愛撫していれば、美依は俺の頭を手で抱えながら、力なく指で髪を梳いた。
「そ、んな…したら、もうっ……」
「奪った所は返さなくて良いのだろう?ならば…存分に愛でてやる、だから貴様も俺を好きにしろ。全て奪ったのだからな」
「これじゃ、無理です……っ」
「くくっ…貴様にしては随分弱気だ」
胸元から顔を上げ、ふっと笑めば美依は俺を見て少しだけ目を瞠る。
すると、美依は俺の目元に指でそっと触れ……
何だか安心したように、柔らかく言葉を紡いだ。
「もう…翳っていませんね」
「は……?」
「貴方は時々、虚ろで光のない目をしていました。さっき信玄様と対峙した時もです」
「……」
「でも今は違うから…安心しました」
(それは、貴様を失うと思ったからだ)
躰だけ奪い、心が手に入らない虚無感。
全て失うかもしれないという恐怖。
美依が離れていきそうで…ただ怖かった。
でも、今美依はこの腕の中に居る。
己が自分の瞳を見る事は出来ないが…
今はきっと熱を宿した獰猛な目になっているに違いない。
そのくらい、貴様が欲しい。
渇望が己を焦がし…身を焼きそうなくらいに。
「貴様が傍に居るからな、美依」
「信長様……」
「貴様が居れば俺は満たされる。心も手に入れた今…何も怯える心配はあるまい」
「……怖かったんですか?」
「そうだな。だが、今はそれよりも……」
俺が目を細め、若干怪訝な表情をすると、美依は少しだけ首を傾げた。
膝の上で、着物をはだけさせ、上半身が剥き出しの美依。
よくよく見れば…その白い肌にはいくつも赤い華が咲いている。
昨夜、信玄に愛されたその名残。
それは"俺のものだ"と主張しているようで、正直気分の良いものではない。