第10章 黒と蜜、紅と熱 * 信長END
「美依……」
「んっあ……っ」
「美依っ……!」
『貴様だけを───………愛している』
焦がれる恋情の行方。
ようやく…一本の線に繋がった。
────もう、離さない
俺達はその躰も想いも重ね合わせながら、やっと本当の意味で『ひとつ』になった。
目の前が煌めく、光を宿していく。
もう怖くはない、それを実感したら……
紅色をした熱に柔らかく包まれたような、そんな心地に陥ったのだった。
*****
初めて女を抱いたのはいつだったか。
心が虚しく、夜は眠れずに寒くて……
だが、その対策は簡単だった。
『褥を温めろ』と言えば、名乗り出る女は沢山居た。
それはとても合理的で、俺自身も温まる。
確かに身体的温もりは得られたとは思う。
だが……心から満たされる事は無かった。
貴様が初めてだ、
こんなに心底"欲しい"と思い、求めたのは。
「あっ…ん、ふ…んん……っ」
淡く色づいた肌に唇を這わせる。
胡座の上に、着物を乱しながら跨る美依。
腕を首に回し、色っぽく首を逸らして……
舌先でくすぐったら、敏感に震えてまた喘いだ。
離れ難いのか、俺の頭を強く引き寄せてくる。
いつもとは違い、やたら甘えるような仕草に、俺は苦笑しながら美依に問いかけた。
「どうした、そのように甘えて」
「んっ…だって……」
「嬉しいのか、触れられるのが」
「は、はい……っ」
美依は瞳を真っ赤に潤ませ、俺を真っ直ぐ見つめながらそう答える。
……愛らしいにも程があるだろう。
気持ちが通じ合っただけで、こうもまた愛らしさが破壊的になるものなのか。
(いや……気づけなかったのが悪い)
褥の中では気持ち良く啼かせて蕩けさせてはいたけれど、それは利己的だったのかもしれない。
本当に美依が心から満足していたか。
それを問われれば、絶対に違う。
美依はずっと苦しい思いをしてきたのだから。
美依はこれ程までに愛らしい女なのだ。
きちんと愛してやれば、こうして素直に受け入れ、そして極上の華になる。
これからは、もっと愛してやりたい。
そして…もっと心から満たしてやりたい。