第10章 黒と蜜、紅と熱 * 信長END
(美依、どこへ行った……?)
夜が明ける前は、一番暗いと言う。
そんな暗い夜明け前の城下を、俺は美依を探し、ひたすらに歩き回っていた。
美依が天主から逃げたからだ。
首筋に他の男から愛された痕を残していた美依。
俺はそれを見て嫉妬し……
美依を天主の柱に繋いで、ひたすらに『仕置き』を繰り返した。
あの小さな躰を攻め、穿いて……
昼夜問わず奥底に熱を注いでは、意識を飛ばすまで抱き潰した。
美依は好さそうに啼いていたけれど、本当に『気持ちいい』と感じていたかは解らない。
そのくらい醜い激情をぶつけ……
俺は黒い感情に飲まれたまま"躾"と称して行為を強いたのだ。
────美依が逃げたのは
俺がほんの僅かな間、天主から離れた時
本来ならば、動くのすら辛かったはずだ。
でも、美依は居なくなった。
それほどまでに、嫌だったのか。
貴様は……俺を嫌いになったのか。
(まさか、痕を残した男の元へ……?)
焦りから、思考が良からぬ方に向く。
美依が居なくなったのは夕刻、そして今は夜が明ける直前だ。
美依は俺から逃げ、好いてる男の元へ向かったのか。
そして……癒されるために、そのまま。
そこまで考えて、カッと頭に血が上った。
あやつが他の男と一夜を過ごし、愛されるなど考えただけで虫唾が走る。
美依は俺のものだ。
あやつの躰は、俺だけが愛でていいものだ。
……だが、奪えなかった心を愛でるのは?
「………っ」
酷く心が軋む。
張り裂けて、ちぎれそうに痛い。
俺は間違っていたのか。
ただ欲望のままに振り回し、あやつを深く傷つけて……
だから、貴様は逃げたのか?
修復不能なくらい、関係は崩れたのか。
どんどん思考が落ちていく。
俺は立ち止まり、木に手をついて荒れだした呼吸を整えた。
だんだんと空が明るみ始め、気がつけば、城下外れの小川の所まで来てしまっていて。
無感情のままぼんやりと川の流れを見れば……
どこからか落ちた葉が、水のせせらぎに乗って流れているのが見えた。