第9章 黒と蜜、紅と熱 * 信長VS信玄《共通ルート》
「知っていたって……」
「俺の情報網を甘く見ないでくれ。君と信長の関係を知っていて、わざと泳がせていたんだよ。口づけの痕だって、わざと付けた。少し強引な手を使って…信長の反応を確かめたかった」
「っ……」
「言っただろ、俺は君より少し大人で狡い人間だと。君が信長に嫌われ、俺を選ぶなら…手段を選んでいられなかった」
それを聞き、私は驚くしかない。
信玄様は全てを知っていて、わざと信長様に怒りを植え付けたんだ。
口づけの痕を残し、信長様に発見させる事で……
私を敢えて傷つかせ、自分を選ぶように仕向けたの?
(そんなのって……!)
なんて周到な罠なのだろう。
私はまんまとそれに嵌り、信長様を怒らせるのも計画済だったんだ。
すると、信玄様はふわりと私を抱き締めた。
そのまま押し倒され、背中が再度褥について。
私に覆い被さるような姿勢のまま、信玄様は掠れた声を紡ぐ。
「君が信長に抱かれている事実は、俺にとって耐え難い苦痛だった。信長から奪い取れるなら…君が傷つくのもいとわない、俺は酷い男なんだよ」
「信玄様……」
「君が愛しすぎて堪らなかった。もう…欲しくて我慢出来ない。君が欲しいよ、美依」
「……っ」
刹那に響く声。
欲情を露わにした───………
まるで懇願するような、
危うい刃を秘めた、そんな言ノ葉。
「俺は優しくなんかない。
君を奪えるのなら───………
獰猛にだってなる男なんだ。
そして、傷ついた君に付け込んでる。
酷い男で……すまない。
────でも、愛しているんだ。
君を、どうしようもないくらいに」
────狡いよ、信玄様
こんなの、こんなの…逃げられる訳がない
「信玄、様っ……」
「美依……」
「貴方は狡いです、私、私は……」
「……」
「そんな貴方に抗えないじゃないですか…!」
ああ、私は本当に大馬鹿だ。
これが信玄様の思うツボなのだと……
それを解り切っているのに。
もう、逃げられない。
今度は信玄様に捕まる。
この『一線』を越えたら、きっと──……
深みに嵌って、
また信長様を『迷子』にさせるんだ。