第9章 黒と蜜、紅と熱 * 信長VS信玄《共通ルート》
「何故、そんなに泣く?」
「ごめっ…ごめんなさい、信玄様……」
「君は謝るような事はしてないだろ?」
「ちが…っ違うんです……!」
「……?」
「私、私……っ」
────もう、隠してなんておけない
貴方に嫌われると解っていても、
私は……貴方に聞いてほしかった。
そのまま、全てを信玄様に打ち明ける。
信長様との関係、賭けをして身体を全て奪われた事。
心以外の全てを奪われても信長様を嫌いにはなれず、身体だけの関係に抗わなかった事。
そんな中、信玄様と出会い……
心は信玄様に絆されそうになっていた事。
そして、信玄様が付けた痕によって信長様が怒り狂い、この数日間『お仕置き』と称して抱き潰された事も。
「私は信長様から逃げてきました。それでも私は、あの方を嫌いになれないんです。私を一途に想ってくれて、とても深く愛してくれて…私は信長様を好きなのだと思う」
「……」
「それでも、時折心は擦り切れそうでした。それを癒してくれた貴方に…私は甘えていました。貴方の優しさを利用して、他の男の人に抱かれてた…私は酷い女なんです」
「美依……」
「だから、これ以上は優しくしないでください。私はいい加減な女です。貴方に愛される資格はないんです……!」
話せば話すほど、情けなくみっともない。
私は優柔不断で、結局は信長様も信玄様も、両方傷つける事になったんだ。
その吐き出すように紡いだ言葉を、信玄様は静かに聞いていた。
もうこれで、私達の関係は終わりだろう。
こんな風に他の人に染まった女を、好きでいる訳がない。
その気持ちを、踏みにじる様なことを私はしてきたのだから。
すると、信玄様はそっと私の手を掴んだ。
そして、指を手首に滑らせて、縛られた痕をなぞるようにしながら静かに口を開いた。
「これは信長にやられた痕だろう。何故こんな事をされてまで、好きだなんて思えるんだ?」
「そ、れは……」
「それに、俺は君が傷つくのは予想済みだったよ」
「え?」
「だが、ここまでやられるとはなー」
信玄様は何故か苦笑いを浮かべる。
そして、今度は信玄様が私に説明してくれた。
信玄様は信長様に一方的に寵愛されていた私が、どんな扱いを受けていたのか。
それは、初めから知っていたと言うのだ。