第9章 黒と蜜、紅と熱 * 信長VS信玄《共通ルート》
「……仕置きが必要か」
「え……?」
「貴様は、自身の躰は俺のものであると言う自覚が薄いらしい」
「……っ」
「解らせねば…また同様の事を繰り返す」
「ならば、俺が躾けてやる。
貴様が誰のものかを自覚し、
その身にしっかりと刻むまで。
まだその心は俺のものではないが……
これは、いい機会だ。
その心も、俺に差し出すように──……
形無くなるまで、存分に愛を注いでやる」
────私は侮っていたのだ
"魔王"とすら呼ばれる信長様の、本当の怖さというものを。
そして、その純粋な狂気は……
全て、私を愛している故なのだと言うことを。
その日から数日間。
私は天主を出ることを許されなかった。
信長様は朝から晩まで……
私を狂ったように抱き、この身に熱を注いだ。
その数日間、信長様は天主の柱に私を繋ぎ、そのままの状態で何度も穿いた。
『逃げない』と何度言っても聞き入れてはもらえずに、手首にしっかり痕が残ってしまった。
こんな事する人じゃないのに。
信長様はもっと優しくて……
私を蕩かすように愛してくれていたのに。
『美依、美依っ……』
切なげな声が心を震わせる。
信長様、なんでそんな迷子みたいに私を呼ぶんですか?
私は信長様のものでしょう。
それは…揺るぎない事実なのに。
貴方が『俺のものだ』と、そう言ったのですよ?
それでも、こんなに愛されてもまだ、
『────君は温かいな、とても』
私の心が決まらないのは、
一体、どうして───………?
(……結局、逃げてきちゃった)
少しだけ寒い、その日の夕方。
私は独り、とぼとぼと城下を歩いていた。
身体がとても怠い。
昼夜問わず、信長様に愛され尽くされたこの身体は、肉体的にも精神的にも限界になっていた。
信長様が少し天主から離れたスキに、逃げ出して……
宛もなく、城下に出てきてしまった。
お城には帰りにくい、きっと今頃信長様は私を探している事だろう。
そっと手首に視線を移せば、縛られた痕が痛々しく残っている。
それを見ながら───………
私は自分の中の想いに、必死に問いかけていた。