第2章 拝啓 愛しい君へ《前編》* 明智光秀
「美依……」
「あっ……」
俺が美依の髪を片側に寄せ、露わになった首筋に唇を押し当てると、美依はびくりと肌を震わせた。
……ここまで紅潮しているな。
白い肌が桃色に染まって…何とも言えず色っぽい。
まぁ、湯上りと言うのもあるだろうが。
そのまま唇で甘噛みすると、尚も美依は肌を粟立てる。
そして、声を我慢するように…
口元に手を当てようとしたので、俺はその手を掴んで離させた。
「やっ……」
「ほら…言ってごらん、美依」
「……っ」
「言わなければ、このまま続けるぞ?」
「あ……」
今度は、その掴んだ手の甲に口づける。
ちゅっ…と音を立てて啄めば、美依は目を瞑って息を詰めて。
ああ…良いな、その顔。
流されまいと抵抗しているのに、触れられて嬉しい…と言った感じか。
頬を染めて、小動物のように震えて。
そんな姿は俺を煽るだけなんだがな?
耳元で意地悪くクスッと笑えば、涙目になった美依が可愛く睨んできた。
「堪らんな…その顔」
「み、光秀さん、こそっ……」
「うん?」
「文では読みましたが、きちんと…言葉で言ってくれても、いいと思います……っ」
(成程、そうきたか)
小娘も、たまには頭が回るらしい。
確かに俺からも言ってやらねば、平等ではないな。
俺は一回美依の身体を離すと、今度は身体ごとこちらに向かせ、正面で向き合う。
そして、潤んだ瞳を見つめ…
一回、そのまぶたを優しく啄んだ。
「……っ」
「ならば、お望み通りに言葉にしてやる。きちんと聞いておけ」
「は、はい…」
「────美依」
いつしか、心に住み着いたお前。
素直で健気で、そして笑った顔が愛らしい。
そんなお前を、好きにならずにはいられなかった。
俺は特定のものを欲したりはしないが…
お前だけは『欲しい』
心も、身体も、爪の先から髪の一本一本まで。
その全てが愛しくて、
恋しくて、焦がれて止まない。
俺は、お前を───………
「ずっと前から、愛していた。
お前だけを…ずっと目で追っていた。
意地悪でも何でもなく、俺は…
お前の事を、誰よりも愛している」