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【イケメン戦国】新篇 燃ゆる華恋の乱☪︎華蝶月伝

第9章 黒と蜜、紅と熱 * 信長VS信玄《共通ルート》





(信玄様……!)



心臓がどきりと跳ね上がる。
鳶色の着物、薄茶の羽織。
がっしりとした体格に、着物と同じ鳶色の髪。
とても端正で、なおかつ大人の色気も兼ね備えたその男の人は、信長様の敵方の大将、武田信玄様だった。

敵方と言っても、今は和睦していて……
信玄様の国である甲斐も、一旦は信長様の領地になったが、今は二人でと共同統治になっているから不仲な関係でもない。
それでも、信玄様が安土の茶屋にいるなんて、変な感じだ。

私が思わず見入ってしまっていると、その深みを帯びた黒い瞳がこちらに向けられ、また鼓動が高鳴る。
そんな私に気づいた信玄様は、大きな手で私を手招きし、にっこりと優しく微笑んだ。




「天女に会えるなんて、奇遇だなー。こっちに来なさい」

「は、はいっ……」




そのまま信玄様に呼ばれるがまま近づき、隣に腰掛ける。
すると、信玄様はすぐさま店の人を呼び、私にもお茶と甘味を注文してくれた。

それが運ばれてきてみれば…
小さめのお団子に、黒蜜ときな粉がたっぷりかかった、私の大好物の甘味で。
思わず目を輝かせると、信玄様は片目を瞑り、余裕たっぷりに言葉を紡ぐ。




「君の好物はこれだろ?」

「よく覚えてましたね……!」

「君の事なら何でも覚えているよ。好きな女の事に関しては記憶力がいいんだ」

「っ…そう、ですか……」




(相変わらずストレートだな、信玄様は)

思わず頬が熱くなって、視線を逸らした。
『好きな女』なんて言われると照れてしまう。

私が赤くなりながらお団子を食べ始めると、信玄様も静かにお茶を飲み始める。
その姿だけで、なんかサマになっていてカッコイイなぁ…なんて。
食べながらチラチラ視線を送れば、いつしかの記憶が蘇ってきた。






『俺は君の事が好きだよ、美依』






信玄様に告白されたのは、少し前の事。
信長様と賭けを始めて、しばらく経ってからくらいかな。
私は時折、安土に来ている信玄様に遭遇していた。
道端で、市で、茶屋で。
その度に何気ない話をしたり、ご飯を奢ってもらったり…茶屋に入ったのは今日で二度目だ。

その時、黒蜜のかかったお団子が好きと話した。
それを覚えていてくれたなんて、びっくりしつつも嬉しいなぁなんて思ってしまう。






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