第8章 桃色淫書-蜜恋に戯れる想い- * 石田三成
────私も、男なのですよ…美依様
「はぁっ…美依、様……っ」
私は淫画によって昂った身体を持て余し、それから逃れるために愛しい者を頭の中で汚し始めた。
手には艶本、それを目で追いながら……
新年の書庫で密やかに。
その身を堕として、一人での戯れに溺れていったのだった。
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『……三成君』
貴女は私を乱す、
本当に…いけない御姫様だ。
私は崩れる、貴女のせいで。
思考も、理性も、溶けてしまう。
好きです、貴女が好きです、
美依様───………
『三成君、早く、来てぇ………!』
「っ…ぁ、はぁ……っ」
自分じゃないような、甘い吐息が漏れる。
躰は熱を上げて、火照って…
昂りに滑らす手が、滑らかに動いていく。
私は壁にもたれて胡座を掻き、袴の前を乱して、そこから勃ち上がる熱をひたすらに慰めていた。
先からは我慢することによる露が零れ、ぴくぴくと震えながら、血管が浮き出るほど硬くなって。
にちゅっ、にちゅっ、にちゅっ……
竿を擦れば、滴った露で淫猥な音が響く。
それすらも官能的に感じてしまい、心も躰も煽っていく。
頭の中では愛しい者を思い描きながら…
誰が来るかも解らない書庫で、私は自分を癒す行為に没頭した。
「んっ…美依、様……っ」
腰からぞくぞくと快感が這い上がる。
吐く息は浅く、荒く…
口からは自然と、その名が溢れた。
美依様がこんな私を見たら、何と思うのだろう。
浅ましい、獣のような雄の姿。
私だって性欲もあれば、躰が高ぶる時もある。
ですが───………
そうさせているのは貴女なのですよ、美依様。
「次の、頁は……?」
私は一旦昂りから手を離し、反対の手にもつ艶本の頁をめくった。
そこには、男が女を後ろ向きで胡座の上に座らせ、脚を開かせながら挿入している淫画になっていた。
そして、その姿を鏡に写している。
結合部分が鏡面に映し出されているその絵を見て…
私はまた脳内で私と美依様に変換し、その情景をありありと像に描いた。