第8章 桃色淫書-蜜恋に戯れる想い- * 石田三成
淫画、というのだろうか。
乱れた着物で抱き合う男女、まさに性的交わりの刹那。
結合部分まで露骨に描かれ、女は気持ち良さそうに顔を歪め、男も獰猛な雄のような顔つきで…
褥ではなく、町の裏路地のような場所で睦み合う、そんな情事がそこには描かれてあった。
そして、その淫画の説明と思われる詞書(ことばがき)。
それに目を通せば…
その状況がありありと脳裏に浮かび、またカッと身体が熱を上げた。
「な、んで、こんな本が……」
思わず漏れた声が掠れる。
何故こんなにいやらしい本が、城の書庫にあるのだろう。
誰かが悪戯に置いたのか。
それとも、献上された品物に混じっていたのか。
何にせよ、このようなものを見てしまうのは、少しばかり躊躇いがある。
でも───………
(……もう、少しだけ)
私は興味を惹かれ、さらに頁をめくった。
次の頁も、また男女のまぐわいの様子だ。
今度は女が立って襖に手を付き、尻を突き出して…
それを男が後ろから抱え込み、挿入している。
『真昼間の契り』という言葉から始まる詞書は、その様子を生々しく、かつ艶やかに表現していた。
それを、若干頭が湧き立った状態で読む。
こういう色事には縁遠い自分だが、それでも興味がない訳では無い。
その頁の詞書を一通り読み…
また頭の中で再現すれば、ふと変な思考が頭を過ぎった。
「美依様も…こうしたら、こんな風に乱れるのでしょうか」
例えば、この描かれている男女が私と美依様だったとして…
こんな風に昼間からこっそりと隠れるようにして、身体を重ねたとしたなら。
美依様もこの女の人のように、淫らに好くなるのだろうか。
快感に喘ぐ顔をして。
その声はきっと……可愛くて。
『ぁあん…っ三成、君………!』
(………っ)
それを想像した途端、一気に下半身が熱くなった。
そして、意識が『男』の部分に集まる。
だんだん熱を帯び、血流が増してきて…
それが首をもたげ始め、中を圧迫してきたのが解り。
私は片手で口元を押さえると、荒れ始める吐息を誤魔化すように、フーっと深く息をついた。