第7章 揺れるびいどろ、恋ノ花模様 * 織田信長
「わぁ…いっぱい入ってる!しかもこの壺…びいどろなんですね!」
すると、美依が手元を覗き込み、華やいだ笑みを浮かべる。
そう、これはいつだったか宣教師から寄進された、びいどろ製の壺だ。
その時も、金平糖がぎっしり入っていた。
俺は気に入って、ずっとこの壺に金平糖を入れ続けていたけれど…
まあ、秀吉に奪われたからな。
こっそり夜に盗み食いする時以外は見ていないけれど、相変わらず輝きが見事な壺である。
「貴様に贈った簪と同じだ」
「はいっ、光に当てると綺麗ですね」
「美依、口を開けろ」
「え?」
「特別に食わせてやる」
俺は一粒金平糖を摘むと、それを美依の口元に差し出した。
美依ははにかんだような笑みを浮かべ…
そのまま口を開けたので、中に放り込んでやる。
俺も自分の口に一粒入れ、噛めばほのかな優しい甘さが広がった。
美依もぽりぽりと音を立てて噛み、まるで金平糖のような優しい微笑になる。
「ふふっ、おいしいです」
「美依…貴様はこのびいどろのようであり、また金平糖のようでもあるな」
「……どういう意味ですか?」
「くるくると表情が七色に輝くのは、光を集めるびいどろと同じだ」
「信長様……」
「そして、食すと甘い」
「なっ……!」
────また表情が変わったな
そうして愛らしい笑みになるのも、恥ずかしがって赤くなるのも。
また、閨での艶っぽい顔も…
貴様の色んな表情は、俺を惹き付ける。
貴様はまだまだ、俺にとっての未知だ。
これからも色んな貴様を知るのだろう。
そして……
たくさんの知らない感情も教え込まれるのだろう。
だが、それはそれで一興だ。
未知なるものを知るのは興味があるし、心も踊る。
これからも俺を惹き付け、魅了しろ。
光輝き、愛くるしい笑顔で、色香を放つ女の顔で。
俺はいつまでも愛し続ける。
傍に居て、夜には貴様をたくさん抱く。
温もりを分け合い、真夏の太陽に負けないくらいの灼熱さで───………
今日も焦がれて、
甘ったるい蜜情に呑まれていく。