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【イケメン戦国】新篇 燃ゆる華恋の乱☪︎華蝶月伝

第7章 揺れるびいどろ、恋ノ花模様 * 織田信長





(秀吉の言う事も一理あるが、ここまで言わんでも良いだろう)



どうしたものか…と頭を痛くしていると。
天主の入口から『失礼致します』と涼やかな声が聞こえ、光秀が入ってきた。
光秀は相変わらずの腹の見えない笑みを浮かべ…
一回俺に頭を垂れると、チラリと秀吉を一瞥し話し始めた。




「お取り込み中、申し訳ありません。ですが、信長様のお耳に入れたい事が」

「何事だ、申してみろ」

「秀吉が隠している金平糖の件で」

「光秀、それは今は関係ねぇ!」

「……?」




何やら焦った様子の秀吉。
金平糖の件と言われれば、黙ってはおけない。
秀吉は俺の金平糖をどこかに隠している、それの場所でも伝えにきたのだろうか?

俺がさらに光秀に『申せ』と促すと…
光秀はさも可笑しそうに、口元に意地悪い笑みを作った。




「台所の棚に置いてあるのですが、今朝秀吉はうっかりその金平糖を地にぶちまけまして」

「は?」

「もはや食べる事の出来ない代物になってしまったようです」

「!!」

「み、光秀〜〜〜!!」




頭を鈍器で殴られたような衝撃が走る。
地にぶちまけただと?
俺から奪い、毎日数粒しか与えないそれを…
食えない代物にしただと?

俺が鬼の形相でぎらりと睨むと、秀吉は真っ青になって顔の前で手を振った。
そして上擦った声で、俺に弁解する。




「た、確かにぶちまけたのは事実です!ですが、代わりの金平糖をすでに入れてありますので!」

「……秀吉」

「は、はいっ…!」

「貴様に俺や美依を叱る権利はない。金平糖を隠すのも腹立たしいが、貴様は俺の物を粗末にした」

「うっ……」

「その壺を今すぐ持って来い、貴様こそ反省するがいい」

「も、申し訳ありません……!」






────すったもんだ、すったもんだ

光秀の密告により、昨夜の件の言及は逃れ。
秀吉は金平糖の壺を持ってきて俺に手渡すと、渋々顔で天主から出ていった。

全く、とんだ騒ぎであった。
俺が小さく息をつきながら壺の蓋を開けると…
色とりどりの金平糖がぎっしりと詰まっているのが解り、思わず笑みが漏れた。






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