第7章 揺れるびいどろ、恋ノ花模様 * 織田信長
────恋の模様は深い鮮色だ
肌に咲かせた花も、
心に抱く激情も、
全て煌りと彩られ、模様を作る。
それは貴様が俺に教えた事だ。
鮮やかな感情は温かく、
また貴様自身も温かい。
だから…嫉妬も許せ、
溺れる熱情は、
まだまだ俺にとっては"未知"なるものだから。
「はぁっ…美依…っ」
「また、らめぇっ…のぶ、様…っ」
「いくらでも果てろ、貴様が足りん…!」
真夏の夜、古びた宿屋の一室。
俺達は飽きることなく抱き合いながら、お互いの熱に溺れていった。
桃色の空気は濃密。
嫉妬の感情も、それを助長する刺激となり。
それこそ空が白んでも躰を重ねる事を止めなかった俺達は、閨から出られずにいたのだが…
今回は秘密の逢瀬。
本来ならば夜の間に城に帰る予定だったのに。
それが狂ってしまったからには、もはや秘密は秘密でなくなる。
それがどういう事かと言えば──……
*****
「信長様!あれほどお出かけの際は護衛をお付けくださいと言っているでしょう!!」
(……全く、うるさい猿だ)
次の日の昼過ぎ、村から戻った俺達を待ち受けていたのは、秀吉の小言だった。
垂れ目をこれでもかと言うほど釣り上げて…
何故俺が、家臣である秀吉にがみがみと言われねばならんのだ?
俺は天主で脇息にもたれかかり、ため息をつく。
隣に座る美依は、正座をして秀吉に向かい合って…
半泣き状態で秀吉に謝っていた。
「ごめんね、秀吉さん!私が夏祭りに行きたいって言ったから、信長様がこっそり連れて行ってくれたんだよ!」
「逢瀬なら逢瀬で、せめて一言言っていきなさい!二人が居なくて、どれだけ焦ったと思ってる」
「そ、それは本当にごめんなさいーー!」
「秀吉、美依を泣かせていいのは俺だけだ」
「御館様が反省すれば、美依にも叱りません!」
……駄目だ、完全に怒りが心頭しているな。
やはり夜中に帰って来た方が良かった、だが昨夜は美依を早く抱きたかったし…
色々と思いが高ぶってしまったのもあるし。
だがそれを説明した所で、秀吉が収まるとは思えない。