• テキストサイズ

【鬼滅の刃】私の師範が派手すぎる

第1章 継子




口角を上げ、勝ち誇ったような笑みで近づいてくる鬼。
幸いなことに、刀は手に握ったままだ。鬼との距離が縮まれば頸を斬れる。
なのに、あろうことか鬼はそれを察して、ぎりぎり届かないところで立ち止まったのだ。

ずる賢い…!


「おいおいぃ、そんなんじゃ俺の頸は斬れねぇぜ鬼狩りさんよぉ」
「う、うるさい!斬ってやるからもっとこっち来なさいよっ」
「なっ、自分から斬られに行く鬼がいるかってんだ!頭イカれてんのか!?」
「どうせ私に頸を斬られるのが怖いんでしょ!」
「怖いわけねぇだろ!てめぇみてぇな餓鬼なんざ一飲みできるわ!」
「“餓鬼”はあんたでしょぉ!?」


鬼と口論したのは初めてである。
しかし、遊んでいる場合ではない。早く鬼を倒して、師範と合流しなければ…。
足に絡まっている縄を切ってもいいけれど、落下している最中に襲いかかられても困る。
それに、これ以上怪我をしたくない……から。

やるしか、ない。


「フゥ…」


ゆっくり目を、そして口を閉じ、呼吸を整える。
落ち着け。大丈夫。私はできる。音柱の継子だもの。
それに…何度も何度も、成功してきた技じゃない!

「あァン?」と首を傾げた鬼は、瞬きをして私に一歩、近づこうとした。
と同時に、私は体が逆さのまま日輪刀を構える。


「…音の呼吸、壱ノ型っ」


目を開き、腹の底から声を出す。
刀を握る手に力を込め、鬼に向けて殺気をド派手に放てば、間抜けな顔を浮かべていた鬼も瞬時に殺気を放つ。
鬼は牙を剥き、先の尖った爪を私に向かって振りかぶった。


「何だてめぇ、やんのか!!」


鬼の爪が私にかかる寸前。
頭の天辺から足の爪先まで感覚を師範にすり込まれた、音の技を口にした。




「轟ッ!!!」




振り下ろした刀で、爆発を起こす。
闇に包まれた森の中に、けたたましい轟音が鳴り響き、闇に慣れてきていた目には眩いほどの閃光が辺りに爆ぜた。

私に勝てると思うなよ、鬼。
師範を誰だと思ってるの。


音の呼吸で鬼の頸を斬れたときだけ、私の心は自信に満ちる。
師範に教えてもらった呼吸だから。
達成感が、ひどく心地いいんだ。




/ 38ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp