第2章 おつかい
目の前に降りたった煎ちゃんから袋を受けとり、ありがとうと再度伝えて頭を優しく撫でてあげる。
照れくさそうに私の手にすり寄る煎ちゃんが可愛くて可愛くて、抱きしめてしまいたくなった。
「本当に良かった…無くしてたらどうしようかと…」
煎ちゃんが持っていてくれなかったら、師範から預かったお金が無駄になってしまうところだった。
相棒に感謝してもしきれない。
「お菓子も見つかったことだし、お蕎麦食べましょう?」
「そうですね!あ、でも、伊黒さん…」
「もう済んだ」
いつの間にいたのか、私のすぐ後ろに立っていたので少し驚く。
おそるおそる荷馬車の方に目をむけると、先ほどのおじさんがしょんぼりと肩を落とした姿で丸太の後片付けをしていて。
周りで事故を見ていた野次馬の人たちが、それを快く手伝ってあげている。
私もお手伝いした方がいいかな?バラバラに斬っちゃったのは私だし…
そう思って見つめていれば、伊黒さんにそっと肩を叩かれた。
「気にすることはない。お前は人の命を救った、それだけで十分だ。片付けくらい任せればいい」
「は、はい…」
「そうよ舞千ちゃん、とってもいい事をしたんだから!素敵だったわぁ、キュンとしちゃったもの!きっと宇髄さんもたくさん褒めてくれるわよっ」
「ふふ、ありがとうございますっ」
「舞千エライ、エライ〜!カアァ!」
改めて褒められると、なんだかくすぐったくなって頬をかいた。
いいことをした後はなんて気分が良いんだろう。
「それじゃあ、そこのお蕎麦屋さんに入りましょ!私もうお腹ペコペコなの〜っ」
「ああ、そこにしよう」
「ご馳走になります!」
「オ煎餅!オ煎餅〜!」
最初に私が入ろうとしていたお蕎麦さんに足を踏み入れ席につくと、私は山菜そばを注文する。
煎ちゃんにお煎餅をあげている間に、甘露寺さんは二、三種類のお蕎麦を五人前ずつ注文していたけど……それをぺろりと平らげてしまうのだから、すごい食欲だ。
なのに体型は変わらないなんて…同じ女性として羨ましすぎる。
「ご馳走さまでした!」
しのぶちゃんによろしくね〜!と満面の笑みで手を振る甘露寺さんたちと別れ、少し足早に蝶屋敷へ向かう。
お菓子、喜んでくれるかな?