第2章 おつかい
たとえ任務がなく昼間であろうとも、隊服を着ずに外出するわけにはいかない。
そう思って、日輪刀も所持していたのだ。
まさか丸太を斬るために使用するとは思わなかったけど…。
「あの子がやったの?」
「女の子じゃないか!」
「無事でよかった…」
「ありがとう!」
静まり返っていたのは一瞬だけで。
砂煙がすべて晴れる頃には、私に向けた歓喜の言葉が飛び交っていた。
なんだかくすぐったい。
「舞千ちゃん、本当にありがとう!おかげで助かったわぁ!」
「俺からも礼を言う」
「い、いや、そんな、ふふ、照れますぅ!」
崩れ落ちてくる丸太を、一瞬のうちに斬り刻めるかどうか不安だったけれど…なんとか、当たっても致命傷にならない程度まで斬り刻めた。
自分の判断を褒めたい。おかげで、私のそばにいた一般の人たちにも大きな怪我はないようだ。
でも、丸太を運んでいた人に一応謝らないと…。
ちぎれやすい縄を使っていたその人も悪いけど、もしかしたら丸太を斬ってしまったことを怒られてしまうかもしれない。
「あ、あの、丸太を斬っちゃってごめんなさい…」
荷台の丸太が崩れ落ち、さらにそれを私のような小娘に細切りにされ驚いたのだろう、尻もちをついて呆けているおじさんがいたのでおずおずと近づいて謝った。
「…ぁ、ああいや!こっちこそ悪かった!まさか縄が切れちまうなんて…怪我はないかいお嬢ちゃん?」
声をかけられたことで我に返ったのか、冷や汗を顔に浮かべて立ち上がった。
怒られなかったことと、逆に心配されたことにホッとして、笑顔を返す。
「私は大丈夫です。周りの人も、怪我がなくてよかった…」
「本当だよ…しかしすごいなぁお嬢ちゃん、刀使えるのかい?」
顎髭をいじりながら、私の腰にさがる日輪刀に目をうつすおじさん。
銃刀法違反で訴えられるかな!?と怯えるけど、おじさんの物珍しそうなものを見るその目に胸をなでおろした。
「あ、はい、まあ…」
「びっくりしたよ、動きが速すぎて見えなかったぜ!」
「そ、そんな、えへへ……でもこの丸太、商品だったんじゃないですか?本当にごめんなさい…」
「いいんだよ!お嬢ちゃんが謝ることじゃあない!」
「そうだ、鈴宮が謝る必要はない」
「…えっ」
突如聞こえた冷たい声に、背中が凍りつくような気がした。