第2章 おつかい
「美味シイ!舞千、カステラ美味シイヨ~!」
もぐもぐと咀嚼し、飲み込んでから煎ちゃんは嬉しそうに翼をばたつかせた。
私も食べてみて美味しかったし、カステラは誰でも手を伸ばしたくなる美味しい高級菓子だから、きっと蝶屋敷のみんなも喜んでくれるはず。
これにしよう!
「おばあさん、このカステラ、一箱ください!」
「はぁい、どうも」
新緑色の可愛らしい箱に入ったカステラを一箱購入。
とっても美味しかったから、雛鶴さんたちにもいつか買ってあげよう。
おばあさんが丁寧に包装してくれている間、色々なお菓子が並べられた棚を見回す。
あれも美味しそう、これも美味しそう、と目移りして浮気しそうになっていると、カステラを食べてからずっと至福の表情を浮かべて大人しかった煎ちゃんが突然、カッ!?と声を響かせた。
驚く間もなく、煎ちゃんは叫び出す。
「舞千!舞千!アノオ煎餅、美味シソウ!カアァ!」
「どれ?…あ、これ?おばあさんこのお煎餅もください!」
「あらあら、ありがとねぇ」
「食ベタイ!食ベタイー!」
カステラの箱とは別に包装してくれたおばあさんから二つを受け取り、雛鶴さんから預かったお金でお会計を済ませる。
変わらずニコニコと笑顔で、私と煎ちゃんを見送るおばあさんにお礼を言って、その場をあとにした。
「舞千、食ベヨウ!早ク食ベヨウ!」
「待ってよ煎ちゃん、先にお昼ご飯食べなきゃ」
「エエエエッ」
ガーンッと顎が外れそうなくらい口を開いた煎ちゃん。
おやつは後でね?そう言って頭を撫でてあげれば、しぶしぶ頷いてくれた。
さて、お昼ご飯はなにを食べようか。
ちょうど昼食時なのだろう。街の大通りには人が溢れかえっていた。
カステラのお店にいる間に混んでしまったらしい。
「うどん…お蕎麦……あ、丼物もいいなぁ、お腹すいてるし」
「オ煎餅…」
「も~煎ちゃんったら……じゃあ、煎ちゃんのお昼ご飯はお煎餅でいい?」
「イイ!イイヨー!」
流れるようにそばを通り過ぎていく人を避けながら、お蕎麦にしよう!とお蕎麦屋さんに足を向けた。
直後だった。
「あら?舞千ちゃん?」