第9章 縛る存在
「これがあたしね」
そこにはやや長めなショートヘアの女の子がいた。
赤紫の瞳をおさめたアーモンドアイと上がった口角に今の汐の面影を見出した。
今も昔も愛らしい顔貌には変わりないが、高校生となった今と比べて小6の時の方が少し気が強そうな雰囲気をまとっていた。
「で、これが璃保」
出席番号一番。当時の璃保はウルフカットだった。
今の璃保とそう相違のない強気さが写真からにじみ出てるようだった。
他の写真の女子たちと比べると璃保は明らかに大人びていた。
「…この子、見て」
汐が指さした写真に凛は目を落とした。
と、同時に軽く驚いた。
「似てるでしょ…?」
襟足を少し伸ばしたやや黄みの強い茶のショートヘアと金色の瞳をおさめた丸い目。
髪の色や目の色は違ったが顔全体の雰囲気が汐と似ていた。
「この子ね、上嶋海子っていうの。…あたしの、亡くなった親友」
「上嶋……。…!」
凛は何かを思い出したように息を呑んだ。
かみじまみこ。この響きの名前には聞き覚えがあった。確か、小学6年の頃に出場した水泳の県大会のことだった。
今はっきりと思い出した。一回だけ凛は海子と会話をしたことがあった。