• テキストサイズ

Emotional Reliable

第3章 携帯電話が運んだもの



聖スピラノ学院。県内有数の完全中高一貫型のお嬢様進学校。


「女しかいねぇ...」
女子校である以上当たり前のことを呟きながら凛はスピラノ高校の正門前に立っていた。

いくら名前が女みたいだからといって、この門を越えるのはかなり勇気がいることのように思われた。
それでもケータイがないのは困る。
腹をくくり大勢の女子たちが行き来する門に一歩踏み込んでみた。

見上げるとミッション系の学校を表すかのような美しい建物。
見渡すと綺麗な花が咲いた花壇に、大勢の女子。

「この状況、完璧俺不審者じゃねーか...」
誰にも聞こえないようにぼやいた。
さっきから周りの女子たちの視線が痛い。


さすが女子校。と言えるレベルでスピラノの制服は品がいい。
白いジャケットとスカートに薄い群青色のラインが入った制服。タイが赤だったり青だったり。
よく見たら、いやよく見なくてもスピラノの制服は鮫柄の制服と似ている。

凛は自分の服をみた。白ランだ。
スピラノの生徒と同じような恰好で、恥ずかしくなってきた。
早く帰りたいと心から思う。


(つか、ケータイの人どんなやつかわかんねぇ...)

凛はケータイを拾ってくれた人のことをなにも知らなかった。どんな人なのか。どんな顔なのか。
唯一わかるのは、読み方があってるかどうかすらも微妙な名前だけ。

立ち止まっていても仕方がないので凛は敷地内を歩き出した。


凛はとりあえず事務室に行ってみることにした。
手近な生徒に事務室の場所を訊いたら、室内プールの近くに事務室があるらしいことが分かった。
言われた方向を見てみると確かに室内プールと思われる建物が見える。

途中何人かの生徒とすれ違った。
明らかに不審者をみるような目で凛を見ていた。
振り返ってみるとなにやらひそひそ話をしていた。
凛にはそれが、なにあの人。などと言われてる気しかしなくて自然と早足になった。
しかし実際は、あの人鮫柄の人だよね?、超かっこよくない?と言われていた。


室内プールの近くまできた。誰もいない。
事務室へ行くにはこの建物の前を通るらしい。

凛は校舎のかどを曲がった。そのとき、プールのほうから歩いてきた人とぶつかった。

「って...あ、すみませ...」

小さくて見えなかった、と思いながらぶつかった人を見た。
目があった。どきりとした。
/ 120ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp