• テキストサイズ

Emotional Reliable

第3章 携帯電話が運んだもの


 

まったく自分らしくないミスだ、そんなことを考えながら凛は歩いていた。

「クッソ、ケータイどこで落としたんだよ...」
夕方の買い出しの最中、携帯電話を落としたらしい。
凛はそれを探し歩いていた。が、なかなか見つからない。

凛が鮫柄学園に編入して3週間が過ぎようとしていた。
慣れない土地で寮生活。土地勘が無いから自分がどこでケータイを落としたのか見当もつかない。


時刻は22時をまわる頃だった。
半ば諦めながら寮に帰ってきたところで寮監のおじさんに声をかけられた。

「松岡、お前携帯電話落とさなかったか?」
「落としました」
希望の光が見えた気がする。
誰か親切な人が寮まで届けてくれたのだろうか。

「松岡のものと思われる携帯電話を拾ったと電話があった。これが連絡先だ」
凛は小さく折りたたまれた紙を受け取った。

部屋に戻り渡された紙を開いた。
それにはケータイの電話番号とともに〝榊宮〟という名前が書かれていた。


(さかき...のみや...?)

見たことないような、しかも読み方がこれであってるのか分からないような名前に困惑する。

話したことはおろか会ったこともない赤の他人に電話をする、と考えると眉間にしわが寄る。
しかし、ケータイがないのは困るから腹をくくり電話のダイヤルボタンを押してゆく。

2回のコール音が聞こえた後に、はいもしもし。という女の子の声がした。


(女、か...)

安心したようなそうでもないような微妙な気分になった。
「あの、鮫柄の松岡って言います。さかきのみや?さんすか?ケータイ...」

「あ!この黒のスライドケータイ!あなたのですか?」

やや緊張しながら電話をかけたのがばからしく思える程優しくて明るい声だった。
会話の中でだんだん自分がどのあたりでケータイを落としたのかが見えてきた。

「じゃあわたし、明日学校行く前に警察署に届けておきますね」
これ以上にない親切丁寧な対応であるが、土地勘のない凛にとってはその親切は逆にありがた迷惑なものだった。

「すみません、俺この辺鮫柄の周りしかわかんなくて...警察署の場所わからないっす」
すると電話の向こうの彼女は少し考えたのか、少しの間静かになった。

「じゃあ、聖スピラノ高校ってわかります?わたしそこに通ってるんで、そこに来てくれれば直接お渡しすること、できますよ」
/ 120ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp