第8章 Water
それから数日たった放課後、汐と璃保は部活に行くべく小雨の中歩いていた。
「悪いね汐。傘、入れてくれてありがと」
「いいよー」
傘を寮から持ってこなかった璃保はこの日、汐の傘にお世話になっていた。
つまりは相合傘。
しかしお世話になっているといっても、璃保の身長が170cmで汐が155cmであるからこの場合傘を持つのは璃保の役目だった。
はたからみれば汐が傘を忘れたように見える。
「ねぇ璃保。相合傘ってさ、今のあたしたちカップルに見えたりするかな?」
「もしアタシが男だったら見えたんじゃない?てか、アタシたちがカップルっていってもねえ」
汐が突然意味不明な質問をしてもあまり驚かない。
さすがは今、スピラノで一番付き合いの長い親友というべきか。
「そうだね、璃保にはいるもんね。そういう人」
璃保はくすくすと笑う汐を横目で見た。
(汐は最近笑顔がさらに可愛くなった)
昔から汐は可愛かったしその人懐っこい性格からか小学校時代から今に至るまでかなりモテていた。
今も長身美女揃いのスピラノの中でも他に引けを取らない。
「汐にはいないの?」
「え、あたし?」
「そ。相合傘したい、とか思う人」
先日母にも同じことを言われた。
「あたしにはいないよ」
少し間をとり、汐は言葉を紡ぐ。
「...ねえ璃保...恋って、好きってなんだろうね」
どんな感情を恋というのか、
なにをもって好きと言えるのか、
それが知りたい。