第7章 あめのひ
「朝は晴れていたのに今は雨が降ってますね、松岡先輩」
「そうだな」
午前の部活後、凛と似鳥は買い出しに外出していた。
正直雨の中の外出は気が進まなかったが、似鳥に行きましょうよと何度もせがまれたので仕方なくついていってやることにした。
思いの外雨が強い。
凛は部活のジャージで来たことを少し後悔した。
「そういえば松岡先輩、1週間くらい前にずぶ濡れで帰ってきましたよね」
「ああ」
汐の手を引き駅まで走った。その後急いで帰っても寮につくころにはずぶ濡れだった。
なんでそんな1週間も前の話を持ち出すんだ、と凛は眉を寄せた。
「降り始めたとき、すぐに帰ってこなかったんですね」
なかなか鋭いところをついてくる。
「誰かと会っていたんですか?」
前も同じような質問をされた気がする。
別に、とそっけなく返した。汐と会ってることを隠すつもりはないが、いうつもりもない。
凛は思う。恐らく似鳥ももう気づいているだろう。
凛がランニング中に誰かと会っているということを。
それが汐であるというところまで気づいているかどうかは定かではないが。
目的地であるディスカウントショップについた。
食料から日用品まで安価で揃うので、寮から多少距離があっても凛たちは買い出しにはここを利用している。
凛はもともと行く予定ではなかったから何も買わなかった。
そもそも財布を持ってきていなかった。
似鳥が買い物をしている間、店内を歩いていた。
ふーん今日はこれが安かったのか、とまるで主婦のようなことを考えながら休止中のレジの前を通過したとき。
白いジャージに群青色のハーフパンツ姿の見慣れた赤茶の髪の背の低い彼女を見つけた。
(は!?なんであいついんだよ...)
突然の汐に少し動揺しながらも彼女を横目でみた。
窓の外を眺めて少し困ったような顔をしていた。
声をかけようかかけまいか迷っていたとき、会計を済ませた似鳥が凛のもとへやってきた。
「先輩、お待たせしました。」
「似鳥」
再び横目で汐をちらっと見た。その愛らしい顔に相変わらず困りの色を見せている。
似鳥は汐の存在に気づいていない。
凛は内心溜息をついた。
どうしても汐のことが気になってしまう。
そして似鳥にこう言った。
「悪い、俺用事思い出した。似鳥お前先帰ってろ」