第7章 あめのひ
帰宅した汐はすぐに濡れた服を脱ぎ捨てて風呂にはいった。
ジャージを羽織っていたとはいえ、濡れた制服はゆっくりと体温を奪っていった。
湯船で十分温まり風呂を出た。手早く着替えて髪を乾かす。
そこまで済ませて汐は自室の扉を開けた。そして机の上に置かれたケータイを手に取りベッドに座った。
メールの受信を表す薄い紫のランプが点滅していた。
そのランプの光を見て汐は顔をほころばせた。
ケータイを開き、そして届いたメールを開封した。
差出人は〝松岡 凛〟。
〝次からは折りたたみ傘持っとけよ
風邪ひくんじゃねぇぞ〟
折りたたみ傘持ってたけどね、と汐はくすくすと笑った。
メールの文は相変わらず素っ気ないが不器用ながらも凛の優しさがよく伝わってくる内容だった。
カタカタと返信を打ちながら汐は思った。
(松岡くん、あたしを送ったあと雨の中走って帰ったのかな)
きっとそうだ。電車の中から見た雨は止むどころか心なしか強くなっていた。
少しおちゃらけていた文章を打ち直した。
〝あの後雨に濡れながら帰ったよね
松岡くんこそ風邪ひかないでね〟
送信ボタンを押した。ケータイを閉じてベッドに横になった。
(せっかく1週間ぶりだったからいろいろ話したかったな)
会話を重ねる度に凛は少しずつだがいろいろ話すようになっていってる。
今まで知らなかったことが知れる。
会話のテンポや受け答えからも本来の凛は話好きだということが汐には感じ取れた。
最近はそんな凛と会話をすることが楽しくて仕方がなかった。
(雨ってやだな)
今日は雨にその機会を奪われた。
モヤモヤした気持ちを抱えたまま、汐は知らないうちに眠りについていた。