第7章 あめのひ
初めに感じた小さな一滴の降る間隔が徐々に密なものになっていく。
「雨か...?」
小さな一滴はすぐに大きな一粒に変わった。
「やだ、雨降ってきた」
服がじんわりと湿っていく。
(天気予報通り...)
今朝、母親の言っていたことをおもいだした。
天気予報というものは、当たって欲しいときに当たらなくて、当たって欲しくないときに当たるものだとつくづく思う。
「榊宮、お前傘持ってねえよな」
凛はぽつりとつぶやいた。
そして小さく舌打ちした。
「おい、駅まで走るぞ」
「え?」
折りたたみ傘持ってるよ、と言う前に凛は走り出してしまった。
「え、ちょ、待ってよ!」
先を走る凛を汐は一生懸命追いかける。
鞄もあるし靴もローファーだ。走りにくい。
「遅ぇよお前。ボサッとしてんな」
「そんなストレートに言わないでよ!あたし運動苦手なの!」
そもそも汐は運動が好きだが得意ではなかった。
速度を緩め、振り向いた凛に追いついた。
そして今度こそ、折りたたみ傘あるよと言おうとした。
その時。
「しゃーねーな...行くぞ!」
凛は汐の手首をつかんだ。そして走り出した。
「わっ」
ぐん、と引っ張られ一瞬よろけた。
凛に手を引かれて走っている。鼓動がはねた。
水たまりを蹴って、さああ...と雨が降る中2人は駅まで走る。
折りたたみ傘のことはあたしの心の中にしまっておこう、汐は掴まれた手首にそう語りかけた。