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Emotional Reliable

第7章 あめのひ


後ろからの足音がだんだん速く近くなっていく感覚を覚えた。


(もしかして、)

足音が自分に最も近いところで止まった。汐は振り向いた。


「よう」
そこには汐が思い描いていたその人が立っていた。
凛だ。

「松岡くん!」
名前を呼んだ。自然と笑みがこぼれた。
凛のほうは相変わらずいつも通りのつんと澄ました顔だった。

「久しぶりだな」
「そうだね」
久しぶり、といっても1週間ぶりくらい。
しかし2人ともこの1週間がこれまでの1週間よりも長く感じたようだ。


「この1週間なにして...」
そこまで言って汐は言葉に詰まった。
汐の視線は凛の腕にあった。


(松岡くん...腕の筋肉すごく綺麗...)
汐は隠れ筋肉フェチだった。
普段スピラノ水泳部の女の子たちの洗練された美しいしなやかな筋肉を見ているため目は肥えている。
その目にも魅力的に映るほど凛の筋肉は素晴らしい。
いわゆるperfect body。

「...榊宮?いきなりどうしたんだよ?」
急に言葉に詰まった汐を怪訝に思ったのか、凛が眉を寄せながら声をかけた。

その声に汐は我に返った。

「え!?あ...えと、なんでもないよ!」
あわてて笑顔を作った。

「松岡くん、半そでになったんだなーって思って!」
あなたの腕の筋肉に見惚れてました、なんて言えるわけもなく。
汐的にはうまく誤魔化せたつもりだったが、凛からすれば不審感が拭いきれない。


不審者感がぬぐいきれない汐と、それを見て見ぬふりをした凛は歩き出した。
厚い雲が空を覆っている。今にも雨が降り出しそうだ。


「半そでって言われて思い出したけど、お前、衣替えしたんだな」
「うん。6月ももう1週間過ぎそうだしね」

黒い七分丈のシャツに金ボタンのついた白いジャンパースカート。丈は短め。襟元は冬服や合服同様、赤いタイで締めていた。

「でもまだ夏服じゃ少し肌寒いかな」
「そうか?暑いだろ」
「松岡くんは暑がりなんだね」

そこまで言って汐は頬にぽつり、と何か降ってくるのを感じた。

「え...?」
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