第6章 星月夜
「汐、今夜流星群だって」
部活後の部室で璃保は汐に声をかけた。
「そうなの?」
「うん。朝のホームルームで先生言ってたじゃない」
そうだっけ、と汐は笑いながらヘアピンを前髪につけた。
ゴールドの華奢な細工に赤や赤紫のストーンのついた可愛らしいピンだった。
「流星群のピーク、8時過ぎだって!」
「ねね、みーこも寮で一緒に見ようよ」
8時。汐の胸ではやけにこの言葉が大きく聞こえた。
(8時すぎかあ...もしかしたら...)
凛と一緒に見れるかもしれない。そんな淡い期待が胸をほんのり温かくした。
(でも、ただの友達のあたしと見てもなあ...)
心の中で自問自答を繰り返した。
そもそも今日流星群って知らないかもしれない、それだったらみんなと見たほうがいいのかも。
「みーこ、聞いてる?どうする、寮寄ってく?」
「あたしは...」
帰り道。今日は一段と星空が美しい。
星たちもいつもよりも輝きを増している。
結局汐は寮には寄らずに帰ることにした。
スピラノの門のところで汐は凛にあててメールを打っていた。
〝今夜、流星群なんだって〟
だからなんだ。と感じそうなメールだった。
汐も、そうだな。の一言で返されちゃうかな、と思った。
それでもメールしたかった。
送信ボタンを押した。
ケータイの画面に、メールを送信しました。と表示された。
これでよし、と思いケータイを閉じようとした。
そのとき。
画面に、メールを受信しました。と表示された。
凛からの返信にしては早すぎるし、誰だろうと思い差出人を見る。
すると、メールは凛からだった。
「返信はやっ」
汐はくすくすと笑いながらメールを開いた。
すると、そこに書かれていた内容は思いもしないものだった。
〝今夜、流星群らしいな〟
汐の送ったメールの返信にしては噛み合わない。
さらには件名が、Re:ではなく、無題になっている。
受信した時間を見た。20:04。
先ほど送信した時間を見た。
20:04。
(これって、もしかして...)
どくん、と胸がはねた。