第6章 星月夜
汐からのメールに返信をし、凛はベッドにごろんと横になった。
(似鳥の奴、いきなり何を言い出すかと思ったら)
いきなりあんなことを言い出すから、汐と一緒に歩いているところを見られたと思った。
しかし似鳥は中、といった。
つまり、2人の会話は噛み合ってるようで噛み合ってなかった。
(まだ出会って一ヶ月かそこらだろ。好きもなにもあるか)
汐から返信がきた。だってマネージャーだからね、という短い文章に可愛らしい絵文字がついていた。
(鮫柄の選手とスピラノのマネージャー、そんだけだろ)
凛が風呂から帰ってくると汐からメールが届いていた。
開いてみると、凛には予想外の内容だった。
〝てか今日思ったんだけど松岡くんなにかいいことあった?前よりとげとげしい感じがなくなったね〟
いいこと。凛は考えた。いいことかどうかは微妙だが、スポーツショップで遙と県大会で勝負する約束をした。
水泳に臨む上で明確な目標ができた。
色々ごちゃごちゃ考えながら泳ぐより、勝負のことを考えながら泳ぐほうが思うように泳げる気がする。
いいことというのは、おそらくそれ。それが凛の表情の険を和らげたのだろう。
ただ話してるだけじゃなくて、ちゃんと自分のことも見ている。と思うとなんだか頬が緩んだ。
それに、汐の表情を読み解くという能力は純粋にすごいと思う。
よく見てるんだな。という返信に対してきたメールが先ほどのそれである。
汐はマネージャーとして選手の心配をしている。他校だろうと選手は選手だ。気にかかるんだろうと凛は思った。